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緊急学習会 「生活保護バッシングで 誰が得するの?~国の責任放棄の真相~」資料

1.水際作戦ってなに?

生活保護の窓口でどんなことが起きているのか

  • 働ける年齢層は保護できない…
  • ホームレスでは保護できない…
  • 親族(子や親・兄弟姉妹)に面倒をみてもらえ…

保護開始後も「硫黄島作戦」

  • 2ヶ月以内に就労しないと廃止する…
  • 辞退しなさい…

小泉政権時代 社会保障予算を毎年2200億円ずつ削減

厚生労働省の後ろ向きの姿勢

  • 全国福祉事務所長会議 2006年(H18)5月に初開催
    「生活保護の適正運用」 ⇒ 「関係先調査の徹底」
    「具体的な比較」 ← 保護率が高いところは「仕事をしていない」
  • 通院交通費の原則不支給通知(2008年)
    例外として支給できる条件
    へき地等により、最寄りの医療機関に電車・バス等により受診する場合であっても当該受診に係る交通費の負担が高額になる場合
  • 厚生労働省の監査は、どういう福祉事務所を対象とするか

2.扶養義務とは?

日本の民法は、前近代的な規定(夫婦・直系血族・兄弟姉妹は義務を負う)
世界各国のうち、成人した親子や兄弟間で扶養義務を負わせる国は珍しい
   ⇒ ほとんどの国では、所得保障は国家の責任

※日本の裁判所職員が研修で使用しているテキストでは、

「民法の認める親族的扶養の範囲は,近代法に類例をみないほど広範であり、特に現実的共同生活をしない親族にまで扶養義務を課していることを考えると、私的扶養優先の原則の適用に際しては,特に慎重な考慮を払うとともに公的扶助を整備強化することによってその補充性を緩和し、できるだけ私的扶養の機会を少なくすることが望ましい。」(司法協会編『親族法相続法講義案(6訂補訂版)』)

「扶養義務者に扶養困難な理由の証明義務を課す」?

親族間の扶養の程度・方法について、当事者で決められない場合には、家庭裁判所が判断する。その際、家庭裁判所は、権利者の困窮度、義務者の資力だけでなく、権利者の落ち度(虐待や非行等)、扶養に関する合意(当事者の意思)等を、総合考慮して決している。つまり、扶養するかどうかについては、当事者の意思も含めた関係が重要。

「扶養できないことの証明」は簡単ではない。

仕送りをしないこと、仕送りをしても一定額の場合に、それで充分に扶養義務を果たしていることの証明を求める、ということ。実際に、扶養(仕送り)をしている方のほとんどは、完全に保護を受けないですむほどの額ではなく、その一部。
たとえば毎月2万円を援助している場合に、その2万円がギリギリの額であり、たとえば2万5千円や、3万円は援助できないことを「証明」せよということ。抱えているローン(家賃)、光熱水費、食費、通信交通費、交際費、子どもの教育費、平均的な電気製品代、娯楽費用、趣味等々も含め、すべて支出を明らかにしても、そんな「証明」など不可能に近い。また、客観的な挙証資料として、収入についての証明書が必要とされる。この手間も親族にとっては、面倒なこと。ただでさえ、扶養照会により親族関係が悪化しているのに…

3.生活保護の利用率と捕捉率

日本の貧困は深刻。貧困率は、OECD諸国の中でも4番目に高い15%程度

しかし、生活保護の利用率は、人口比で1.6%
他の先進国(ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%等)

生活保護を利用できる人のうち、実際に利用している人(捕捉率)は2~3割
実は、210万人だけでなく、さらに数百万人が利用できるはず
憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」=「生存権」
「受給漏れ(漏給)」は、まさに憲法第25条違反。

GDPに締める公的扶助(生活保護)費の割合は、わずか0.5%
(OECD平均は3.5%)

しかも、他国は最後のセーフティーネット(公的扶助)に至る前の社会保障制度・雇用保険制度・職業訓練制度が充実している

「不正受給(濫給)」は、金額ベースで0.4%弱 ← 増えてはいない
  悪質な不正受給はごく一部
  ケースワーカーが寄り添う援助をすれば防げるものが多い …高校生のアルバイト

4.保護世帯はどのように増えているのか  生活保護世帯類型と推移

世帯数構成割合(%)世帯数構成割合(%)
総数 600,980 100.0 1,491,120 100.0 148.1 2.48倍
高齢者世帯 254,292 42.3 633,393 42.5 149.1 2.49倍
母子世帯 52,373 8.7 113,428 7.6 116.6
傷病者・障害者世帯 252,688 42.0 490,367 32.9 94.1
その他の世帯 41,627 6.9 253,932 17.0 510.0 6.1倍

■なぜ高齢者が増えるのか → 年金制度が不充分だから

老齢国民(基礎)年金受給者 2542万人 うち、基礎部分だけ 829万人
その平均受給額は49000円・・・無年金者 118万人

■30万人は働いて自立できる人!?  その他世帯はどんな人? 母子世帯は?

その他世帯の半数以上が60歳を超えている人 しかも、充分な稼働能力がない

■母子世帯の母の8割以上は、現に就労している

・・・常用雇用者が42.5%、臨時・パートが43.6%

  • 母子世帯の母で不就業の者のうち、「就職したい」とする者が約8割
  • 母子世帯の1世帯当たり平均所得金額は、211万9 千円
  • 世帯人員1人当たり平均所得金額は、81万3千円
  • 母子世帯の完全失業率は7.1% (一般世帯の完全失業率は3.9%)
  • 母子家庭の就業率の高さは、先進国の中で極めて高いのが日本の特徴
    ⇒ 就業しても貧困から抜け出せないことが問題

■働こうとすれば、働ける雇用情勢か

  • 完全失業者 300万人 失業率4~5%
  • 「完全失業者」=仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をせず(就業者ではない)、
    仕事を探していた者で、仕事があればすぐに仕事に就ける者
  • 有効求人倍率 今年6月 0.82倍  ここ数年0.6倍程度
  • 有効求人倍率 = 公共職業安定所で扱った月間有効求人数を月間有効求職者数で割ったもの。
  • 失業期間(履歴書の空白)があると…
    即戦力しか採用されない…

5.自助・共助・公助

  • 自助 ⇒ 自分のことは自分で面倒をみよ = 自己責任
  • 共助 ⇒ 家族が面倒をみよ、近隣社会で助け合え
  • 公助 ⇒ 国や自治体が面倒をみる

悪魔のような法律 「社会保障制度改革推進法」 ⇒ 生活保護の「給付の適正化」
憲法第25条を実質的に廃棄するに等しい 国の責任放棄、弱者の切り捨て

6.生活保護基準とは

生活保護基準は、「生存権」を具体化した、国民みんなの大切もの
実は私たちの生活全体を地盤沈下させてしまう

【 保護基準引き下げが影響する制度の一部 】
・住民税の課税最低限 ・就学援助(156万人 うち準要保護者141万人)
・公営住宅の家賃   ・保育料   ・児童入所施設の一部負担金
・療育医療の一部負担金   ・障害者福祉サービス利用者負担金の軽減
・自立支援医療の自己負担額  ・高額療養費制度における自己負担医療費の上限額
・国保料(税)の減免   ・介護保険料の減免
・後期高齢者医療の保険料、窓口負担の軽減
・最低賃金       ・生活福祉資金の利用   ……

7.生活保護基準切り下げの動き

★ 自民党 【生活保護制度に関する政策】 2012年4月9日発表

  1. 生活保護給付水準の10%引き下げ、
  2. 自治体による医療機関の指定、重複処方の厳格なチェック、ジェネリック薬の使用義務の法制化などによる医療費の抑制
  3. 食費や被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の現物給付化、
  4. 稼働層を対象とした生活保護期間「有期制」の導入

★ 政府 【2013年度予算の概算要求基準】 8月17日に閣議決定

「義務的経費も含めた歳出全般について聖域視せず」「徹底した歳出の効率化を図る」とし、中でも「「特に財政に大きな負担となっている社会保障分野についても、これを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして,最大限の効率化を図る。」

さらに、年金・医療等に係る経費の高齢化等に伴う自然増(計8,400億円)については容認する姿勢を示しつつ、重ねて「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み,その結果を平成25年度予算に反映させるなど極力圧縮に努める」

8.誰がどのように保護基準を決めるのか

厚生労働大臣 ← 国会で決まるのではない
決め方 ⇒ 厚生労働省の社会保障審議会「生活保護基準部会」で論議
所得階層は、第1十分位層を基準に生活扶助基準額と消費水準を比較する

5年に一度の見直し。
2006年に老齢加算全廃、2009年に母子加算全廃