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労働者福祉中央協議会(中央労福協):社会の底割れを招く生活保護費大幅削減の撤回を求める!(声明)

 政府は2013 年度予算案で生活保護の生活扶助基準を3年間で670 億円、期末一時扶助を含め総額740 億円を削減することを決めた。削減幅は平均6.5%(最大10%)で、96%の世帯で減額となる。
 生活保護基準は憲法25 条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を担保する最後のセーフティットである。その前例のない大幅引き下げは、生活保護利用者の生存権を脅かすだけでなく、国民生活全体に影響を及ぼし社会の底割れをもたらすものであり、到底容認することができない。
 したがって、引き下げ案は撤回し、再考すべきである。

◆ 専門家の検証結果を逸脱し、疑問だらけの「デフレ論」
 厚生労働省で専門家による検討を行った生活保護基準部会の報告書でも、自らの検証結果に限界を認め、安易な引き下げに警鐘を鳴らしている。政府案はそうした配慮を行わないばかりか、基準部会では一切議論されていない「デフレ論」を持ち出し削減額の9割近く(580 億円)の根拠にするなど、あまりに乱暴で「大幅削減の結論ありき」の恣意的な数字あわせと言わざるを得ない。
 この「デフレ論」の根拠や妥当性には多くの疑問がある。そもそも基準部会の検証(低所得世帯との消費実態比較)でもデフレの影響は反映しており、二重の引き下げではないのか。なぜ物価急騰のため基準の引き下げを見送った2008 年と比べるのか。物価の比較にあたって、低所得者の家計で占める割合の高い食料費や水道光熱費の比重が考慮されていないのではないか。
 今後アベノミクスで物価が上昇すれば、実質的な生活水準は更なる切り下げとなり過酷だ。

◆ 子どもの未来を奪い、貧困の連鎖を加速
 今回の案では子どもの数が多いほど減少幅が大きく、子育て世帯を直撃する。生活費が1割も削減されれば、高校・大学への進学の断念、部活や修学旅行の断念、高校中退の増加につながりかねず、子どもたちの未来を奪い貧困の連鎖が強まることが懸念される。

◆ 生活保護利用者だけでなく国民生活全般に大打撃
 生活保護基準が下がれば、現に生活保護を利用している人だけでなく、住民税や社会保険料、保育料等の負担が連動して上がったり、就学援助が打ち切られたりして、市民生活全体に影響を与える。
 最低賃金引き上げへのブレーキにもなりかねない。政府は「他の制度に波及しないようにしたい」と言っているが、自治体の権限や予算に関わるものに対しては、国は「お願い」しかできない。
 生活保護基準がナショナルミニマムである以上、連動する諸施策への波及を完全に遮断することはできないし、仮にできるとするならばナショナルミニマムとしての機能が損なわれることになる。

◆ 国会で徹底的に論議し、撤回・再考を!
 こうした様々な疑問や国民生活への影響について、国会において徹底的に審議し明らかにすべきである。疑問が解消されない以上、削減案は撤回・再考し、改めて生活保護基準のあり方や見直しのルールについて有識者や当事者参加のもとに検討を行うよう求める。

 以上

2013 年3 月6 日

 

 

ソーシャルワーカーは生活扶助費の削減に反対します(医療福祉関係4団体共同声明)

 本年1月29 日、政府は生活保護における生活扶助費の削減を盛り込んだ2013 年度予算案を閣議決定し、間もなく国会における予算審議が予定されています。私たちソーシャルワーカーは、社会福祉分野において、子ども、障がい者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活扶助費の削減には断固反対します。
 最低生活基準については、厚生労働省に置かれた社会保障審議会最低生活基準部会において、一般低所得世帯の消費実態と均衡が図られているか検証を行い、本年1 月18 日に報告書をまとめました。同部会は、検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意」するとともに、「生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、第1・十分位*の所得分布における動向に留意しつつ、なお今後の検証が必要である」ことを指摘して、生活扶助
基準の見直しには慎重に配慮すべきと言及しています。
 閣議決定した生活扶助費の削減は、2008 年と2011 年における生活扶助に相当する消費品目の消費者物価指数の比較によるデフレ調整分4.78%を根拠の一つとしています。しかしながら、この消費品目には生活保護受給者では元来支出割合が少ない教養娯楽費(マイナス7.3%)などが含まれています。最低生活費の主要消費品目である食料費はマイナス0.5%、光熱・水道費はマイナス1.2%(2012 年との比較においてはプラス2.8%)であることから、削減の明確な根拠はないと言えます。
 昨年来の一連の生活保護バッシングは、生活保護受給者の尊厳を深く傷つけることとなりましたが、生活扶助費の削減はそのことに追い打ちをかけることとなります。また、来年度から予定されている消費税率の引き上げは、社会保障の財源確保を理由としておきながら、保護受給者の消費可能額をさらに減らすこととなり、深刻な矛盾を生み出すこととなります。
 問題の所在は、国が定めた最低生活基準以下の生活を強いられている国民が多く存在していることであり、健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利が保障されていないことを強く訴えます。

2013年2月15日

社団法人日本精神保健福祉士協会
  会 長 柏 木 一 惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会
  会 長 佐 原 まち子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
  会 長 岡 本 民 夫
社団法人日本社会福祉士会
  会 長 山 村 睦

* 全世帯を所得階級別に10 等分したうち一番低い層の世帯。生活保護基準以下の世帯が多く含まれる。

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