大阪府警察本部警備部の不当な家宅捜索に強く抗議する共同声明の募集(10/26迄)

生活保護問題対策全国会議」から《大阪府警察本部警備部による、市民団体の家宅捜索に抗議する共同声明の賛同募集》(2013年10月26日27日深夜まで)のお知らせをいただきました。なお、今回団体賛同のみの募集だそうです。

☆転載開始☆

【転載・拡散歓迎です】

私たちは、史上最大の生活保護基準引き下げに抵抗すべく「1万件審査請求運動」に取り組み、つい先般、1万件の目標を突破しました。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この運動に積極的に取り組んできた生活と健康を守る会の大阪と東京の上部団体にまで大阪府警の捜索がなされました。

生活困窮者の生活保護申請に同行し、事後的に当事者が不正受給をした場合、同行支援をした団体の事務所に被疑事実とは関係のない投げ網的な家宅捜索が許されることとなれば、私たち法律家も含めて、申請同行という権利擁護活動が成り立ちません。

下記の共同声明を呼びかけますので、できる限り幅広い諸団体の連名をお願いいたします。
(事が事だけに個人の連名は今回は受け付けません。)

10月26日(土)27日(日)深夜までにこちらの《緊急抗議声明賛同フォーム》からご連絡ください。


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大阪府警察本部警備部の不当な家宅捜索に強く抗議する共同声明に 賛同します。

団体名(                  )
代表者名(                 )
連絡先(                  )

大阪府警察本部警備部の不当な家宅捜索に強く抗議する共同声明

<呼びかけ団体>
生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット・生活保護問題対策 全国会議・全国生活保護裁判連絡会
<賛同団体>
・・・・

本年10月10日,生活保護の申請同行支援を積極的に行ってい る淀川生活と健康を守る会,その上部団体である全大阪生活と健康 を守る会連合会(大生連),さらにその上部団体である全国生活と 健康を守る会連合会(全生連)が,いっせいに大阪府警察本部警備 部によって家宅捜索を受けました。淀川生活と健康を守る会と大生 連の家宅捜索は9月12日に続いて2回目です。 新聞各紙は被疑者女性A 
(1回目)とB(2回目)とも生活保護を申請した際に淀川生活と 健康を守る会役員が同行したことが捜索の理由であると報道してい ます。

生活に困窮した方々が生活保護の申請に行くと,違法な理由で「 相談扱い」で追い返す「水際作戦」が後を絶ちません。そのため, 生活に困窮する方々の支援を行う市民団体の多くは,生活保護申請 の同行支援を行っています。残念ながら,支援者が同行することで ,憲法と生活保護法が保障している生活保護受給権がようやく実現 されるというのが,今の日本の生活保護行政の実情なのです。
不正受給は決して許されることではありません。しかし,支援団体が申請に同行した当事者が事後的に不正受給を行った場合,不正受給に全く関知していない支援団体やその上部団体の事務所も捜索されるということになれば,同様に生活困窮者支援を行っているに過ぎない市民団体の事務所もいつ捜索されることになるか分かりません。そうすると生活保護申請に同行するという正当な権利擁護活動自体が委縮し,抑制されることになります。
今回の捜索差押令状には,令状の差押対象物件として「全国生活と健康を守る会連合会,全大阪生活と健康を守る会連合会及び淀川生活と健康を守る会に関する活動方針,規約,規則,会員名簿,住所録,機関紙誌,名刺,会員証,写真その他組織実態,会費運用状況及び生活保護に関する取り組みなど明らかにする文書類及び物件」という,被疑事実とは全く関係のない記載があり,実際,被疑者の同行支援を行った淀川生健会だけでなく,その上部団体である大生連,さらには東京にある全生連事務所までも捜索の対象とされ,不正受給とは全く関係のない不服審査請求に関する集約表や大会決定集などが押収されたと言います。このように被疑事実と何ら関係のない場所と物件の捜索・押収を請求し,実行した大阪府警の行為は不当であるだけでなく違法です。そして,このように違法な令状を唯々諾々と許可した裁判所もまた,「捜査に対する司法的コントロール」という,その職責を果たしていないと言わざるを得ません

折しも,本年8月,生活保護制度史上最大(平均6.5%,最大10%)の生活保護基準の引き下げが始まり,これに対する「1万件審査請求(不服申立)運動」が取り組まれています。約2カ月の短期間で目標を上回る1万191件の審査請求が提起されましたが,そのうち全生連は約9割の8997件を,その中でも大生連は全国最多の1608件を占めています。1回目の捜索がされた9月12日は全国的に一斉申立と記者会見が取り組まれた9月17日の直前であり,2回目の捜索がされた10月10日は1万件の目標達成の記者会見を行った10月11日,戦後最大の生活保護法「改正」案の国会審議が再開された10月15日の直前です。捜査を担っているのが不正受給事案を通常取り扱う所轄(淀川警察署)の知能犯担当ではなく,府警本部で公安事件を取り扱う警備部であることに照らしても,このようなタイミングで行われた捜索・押収には,国策として生活保護削減が行われている中,これに対する抵抗運動を威嚇し抑制しようという意図があると考えざるを得ません。

このように違法・不当な家宅捜索は決して許されません。私たちは,大阪府警察本部警備部による不当かつ違法な家宅捜索に対して厳重に抗議の意思を表明します。

緊急抗議声明賛同フォーム

☆転載終了☆

 

※この記事のリンク用短縮URLです。⇒ http://bit.ly/1hTkBME

「全国生活と健康を守る会連合会(全生連)」の抗議声明(2013年10月12日)

大阪府警による不当捜査に対して、「全国生活と健康を守る会連合会(全生連)」が、2013年10月12日、抗議声明を出しました。全文を転載させていただきます。

☆転載開始☆

【拡散!至急お願いします】

大阪府警による不当捜査に抗議の集中を!

大阪府警は不当にも、大阪市淀川区での生活保護「不正受給」を口実にして、淀川生活と健康を守る会に3回、全大阪生活と健康を守る会連合会に2回、さらに10月10日には全国生活と健康を守る会連合会・本部事務所にも家宅慢査を強行しました。
翌11日には不服審査請求が全国で1万件を超えた記者会見を準備中の家宅捜索であり、生活保護大改悪への反対運動のひろがりのなかでの弾圧事件であることは明白です。
厳しく抗議するとともに、別添の全生連の要請に基づき、大阪府警への抗議電報(または抗議文の郵送)の集中にご協力いただきますようお願いいたします。

1.抗議先
〒540-0008
大阪市中央区大手前三丁目1番11号
大阪府警本部長 様

2.抗議文案
全生連・大生連・淀川生健会への捜査に強く抗議し、違法撞査を直ちに中止することを求めます。

3.注意事項
今後の影響を考慮し、全生連は別添のとおり、「今回は組織からの抗議」としていることを申し添えます。

以上

2013年10月12日
各組織、関係各位 御中
全国生活と健康を守る会連合会

大阪府警による不当捜査に抗議の集中を

連日の奮闘、お疲れさまです。
この間、大阪府警は大阪市淀川区での生活保護の「不正受給」を口実に、淀川生活と健康を守る会に3回、全大阪生活と健康を守る会連合会に2回、そして10月10日に全国生活と健康を守る会連合会事務所の家宅慢査を強行しました。この家宅捜査は、生活と健康を守る会への組織弾圧であり、生揮権の確立をめざす団体や国民に対する攻撃であり、断じて許されません。
全国生活と健康を守る会連合会・全大阪生活と健康を守る会連合会は、別紙の抗議声明を発表し、抗議と反撃のたたかいをはじめます。全国から大阪府警に抗議電報を集中していただくようお願いします。

抗議先
〒540-0008
大阪市中央区大手前三丁目1番11号
大阪府警本部長 様

抗議文案
全生連・大生連・淀川生健会への捜査に強く抗議し、違法撞査を直ちに中止することを求めます。

… 注意 …
▼個人の抗議は、今後のたたかいの中で各個人に迷惑が及ぶ場合を考慮し、今回は組織からの抗議とします。

★抗議声明

(1) 大阪府警察本部警備部公安第1課は、2013年10月10日、不当にも、全国生活と健康を守る会連合会(以下・全生連)事務所の家宅捜索を強行しました。
我々は、不当捜索に怒りを込めて抗議し、生存権保障運動に対する攻撃と組織弾圧を直ちに中止することを要求するものです。

(2) 捜索理由は、大阪市の淀川生活と健康を守る会元会員の女性に対する生活保護法違反被疑事件についてです。捜索に入った警察官は、それ以上は明らかにしませんでした。
不正受給を許さず、地域住民に支持される社会的道理に基づく方針で運動をしてきた全生連への捜索は明らかに違法です。にもかかわらず警察の言うがままに「捜索差し押さえ許可状」を発行した大阪地方裁判所裁判官の判断も、極めて不当です。

(3) 今年8月からの生活保護基準の引き下げにたいし、「命を削れというのか。引き下げは納得できない」と、全国で1万世帯を超える生活保護利用者が審査請求に立ち上がっています。申請権・受給権を否定し、国民の権利から救貧制度に変質させる生活保護法改悪に反対する国民的運動が広がっている中で、運動を押さえ込むことを狙ったものです。
警察が押収した資料は、「全生連第39回全国大会決定」など、事件とはかかわりのないものであり、組織弾圧を意図したものであることは明らかです。

(4) 生活保護法は不正受給に対して、返還命令や保護の停止・廃止など行政の対応を決めています。全生連の抗議にたいし捜査官は生活保護申請に同行することについて触れています。同行は、人権侵害の「水際作戦」のなかで、申請者の意思にもとづいて申請権を守るための行動であり、何ら違法ではありません。こうした生活保護行政の原則や国民の権利を踏みにじる行為は許されません。

(5) 全生連は、「低所得者を中心とした地域住民の生活と健康、権利の保障を、国や地方自治体、大企業に要求し、実現することを目的」(全生連規約第2条)とし、創立以来59年間にわたって、「貧困からの解放」をめざし生存権保障制度の確立・改善の運動にとりくんできました。
全生連は、生活保護制度と社会保障の総改悪、消費税増税に反対し、国民生活を守るために、国民各階層と連帯して闘う決意を表明するものです。

2013年10月12日
全国生活と健康を守る会連合会

★大阪府警の不当・違法な家宅捜索に対する声明文

(1)2013年10月10日、淀川生活と健康を守る会事務所と全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)事務所、全国生活と健康を守る会連合会(全生連)が被疑者女性Bに関連して、大阪府警察本部警備部によって家宅捜索を受けた。淀川生活と健康を守る会と大生連の家宅捜索は9月12日に続いて2回目である(このときは被疑者女性Aに関連して)。
大阪府警は2回の家宅捜索とも理由を明らかにしなかったが、新聞各紙は被疑者女性AとBとも生活保護を申請した際に淀川生活と健康を守る会役員が同行したことで大阪府警が捜索をしたと報道している。

(2)そもそも生活保護の申請同行は何ら違法行為ではない。大阪府健康福祉部社会援護課は「相談者本人が第三者同席を求める意思を示したときは、これを確認の上、第三者同席による相談を行ってください」(2007年3月23日付 大阪府社援第3626号)という通知文書を各市の福祉事務所に出しており、申請同行を認めている。大生連は、本人が申請同行を求めた場合、同行をして本人の申請権を守るという立場をとっている。生活に困窮し、生活保護を利用したいと福祉事務所へ行っても、申請させてもらえずに追い返される事例は今もあと絶たない。こうした実情を反映して日本の生活保護の捕捉率は15%~18%という低水準に止まっている。したがって申請同行は生存権保障のための大切な権利である。

(3)生活と健康を守る会は憲法第25条の「生存権保障の確立をめざし、生活と健康・権利を守る運動をすすめ、福祉と教育の充実〔略〕社会保障の確立、および平和と民主主義に寄与することを目的」(大生連規約第2条)をもとに60年にわたって運動を続けてきた市民団体である。私たちは、法律に反することや「不正受給」は絶対に許さない立場を明らかにしており、2009年7月の第31回大生連大会でも「運動は地域住民から支持される社会的道義にもとづく活動に徹する」と方針にも明記しており、これを内外に明らかにしているところである。

(4)9月12日の捜索は、全国いっせい生活保護基準引き下げに反対する不服審査請求提出日(9月17日)の直前に行われた。10月10日の家宅捜索は今国会で生活保護改悪法案が審議される直前である。9月12日に押収した資料の中には大生連がとりくんでいる不服審査請求の集約表なども含まれており、10月10日の押収資料は大生連第33回大会議決定集と全生連発行の「守る新聞」だけであった。これら資料は淀川の被疑者AとBの生活保護法違反容疑とは何ら関係がない。刑事訴訟法第102条2項の「被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる」という条文から見ても、大阪府警の家宅捜索と押収は不当であり違法である。同時にこのような捜索令状を許可した裁判所の行為も不当といわざるを得ない。今回の家宅捜索は憲法25条の生存権保障の確立をめざして運動する生活と健康を守る会に対する弾圧以外のなにものでもない。この弾圧事件対して、私たちは弁護士とともに法的手段もふくめて、毅然とした対応をしていくことを表明する。

2013年10月11日
全大阪生活と健康を守る会連合会

☆転載終了☆

 

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さいきまこさんの漫画『陽のあたる家 生活保護に支えられて』連載第3回(最終回)

さいきまこさん作の漫画『陽のあたる家 生活保護に支えられて』(「生活保護」を考える3回連続シリーズ最終話)が秋田書店発行の月刊誌「フォアミセス」2013年10月号に掲載されました。今日9月3日の発売です。最終回では「保護費引き下げの他制度への影響」が描かれています。作品の制作には「生活保護問題対策全国会議」「NPO法人 自立生活サポートセンター もやい」および生活保護ケースワーカーを15年勤めたTさんが協力しています。

「生活保護」を考える3回連続シリーズ最終話!!陽のあたる家 生活保護に支えられて

さいきまこ

「生きていくために」生活保護を受給することになった沢田家。しかし、そのために周囲からの非難にさらされることになる。一家は精神的に追いつめられて…!?

 

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さいきまこさんの漫画『陽のあたる家 生活保護に支えられて』連載第2回

さいきまこさんが「生活保護」をテーマに描いた漫画『陽のあたる家 生活保護に支えられて』の連載第2回が秋田書店発行の月刊誌「フォアミセス」2013年9月号(8月3日発売)に掲載されています。今回は「水際作戦」と「スティグマ」について描かれています。作者のさいきまこさんからのメッセージです。⇒《(とくに男性の方には)手に取りにくい雑誌ではありますが、お目通しいただき、ご感想などいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします》。

驚愕の事実から目が離せない!! 
知っておきたい「生活保護」について!!

 陽のあたる家 生活保護に支えられてさいきまこ

突然、収入が途絶え「もう死ぬしかない」というところまで追いつめられた一家。 
最後のセーフティーネットとして生活保護を申請する決意をしたけれど!?

 

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「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

平成25年6月6日

「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

 

「STOP!生活保護基準引き下げ」アクション

呼びかけ人代表 宇都宮健児

 

現在、国会で審議中の生活保護法改正案(以下「改正案」という)について、①違法な「水際作戦」を合法化し、②親族の扶養を事実上生活保護の要件とするものとして、多くの批判が寄せられていましたが、その後、民主、自民、公明、みんなの4党が、①の点については、申請書や添付書類の提出を必須の要件とはしない内容に修正することで大筋で合意しました。

しかし、②の扶養義務の強化の点については修正合意の対象となっておらず、未だ問題は解決されていません。DV等の被害者が生活保護申請をした場合にも扶養義務者たる夫に通知(改正法24条8項)や調査(同28条、29条)がなされないとも限りらず、また、これらの規定の存在により、DV被害者に限らず、家族関係に問題を抱える人が親族への通知や調査がなされることを恐れて、困窮状態に陥っても生活保護申請さえためらうことになりかねません。

また,①の点についても,申請書や添付書類の提出を要するのを原則としている点で当初の案と修正合意で何ら変わりはなく,行政側において,特別の事情があると判断した場合のみ,書類の提出を要しないとするものにすぎません。

このような修正合意では,残念なことに、困窮している方々が、保護を必要とするときに申請しやすく、安心と安全をスムーズに取り戻すための支援にたどり着くという本来の法律の目的から大きく後退し、生活困窮者をその制度から排除させることを目的とする改正と受け取らざるを得ません。

申請時における申請要件を煩雑にすれば、生活保護を一刻も早く必要としながらも、混乱と困窮の中にある多くの人々をその制度から遠ざけます。それは、とりもなおさず困窮している人々を「生きること」から暗転させ、餓死や凍死、絶望による自死や飢餓状態を脱するための犯罪に走るなどの無用な社会的廃退を蔓延させることになるでしょう。

また,③改正案には、後発医薬品の事実上の使用義務づけ(同34条3項)、被保護者の生活上の責務(同60条)、保護金品からの不正受給徴収金の徴収(同78条の2)など、生活保護制度の中にある利用者にとっても、大きな影響をもたらす問題があります。これらは,およそ性悪説を困窮者の前提とした、暮らしと心に鞭打つ「改正」となっており、これもまた「生きようとすること」への意欲を大きく後退させ、結果として、努力や治療など、その人にとっての「自立」からさらに遠のく結果を招くでしょう。

生活保護制度は、国民がここで安心して生きる権利や、より幸福に暮らす権利を保障する、すべての国民にとって大変重要な制度です。今回、生活保護法が「改正」に向けて、充分な審議もなされないままに推し進められています。命や暮らしに関わるあらゆる制度は、その制度を必要とする人の意見を元に議論がなされるべきです。今回の改正は、年金や医療、最低賃金などあらゆる側面から検証しても、すべての国民の生活の礎である生活保護制度が、当事者の意見はもとより、専門家の審議さえ充分に図りもせず、改正の理由や改正後の予測を十分に精査することもなく、拙速になされようとしていることに、私たちは強い危機感を抱かざるを得ません。

国民を幸福に導かない法改正はいますぐ白紙撤回し、より幸福で安心な社会を目指すための、建設的な議論を、あらためて構築することを求めます。

 

※この記事のリンク用短縮URLです。⇒ http://nationalminimum.xrea.jp/sa130606

以上

資料「生活扶助相当CPIの問題点 生活保護世帯の消費実態を反映しない物価指数」

4月9日に生活保護問題対策全国会議が開催した「”デフレを理由とする生活保護基準大幅引き下げのカラクリを学ぶ”勉強会的記者会見」にて、日本福祉大学の山田荘志郎準教授が発表した生活保護利用者への家電購入アンケート調査結果についての資料です。
各地での学習会にお役立て下さい。



●資料全体(PDF)のダウンロードはこちらから

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日本弁護士連合会「平成25年度予算案で示された生活保護基準の大幅引下げに強く反対する会長声明」

平成25年度予算案でしめされた生活保護基準の大幅引き下げに強く反対する会長声明(日本弁護士連合会)

 現在、平成25年度予算案(以下「本予算案」という。)が衆議院で審議中である。本予算案には、生活保護の生活扶助基準額を平均6.5%、最大10%引き下げる内容が含まれ、これによって生活保護世帯の96%について受給額が減るという。1950年の現行生活保護法制定以来、生活保護基準が引き下げられたのは2003年度(0.9%)と2004年度(0.2%)の2回だけであり、今回の引下げは前例を見ない過去最大の規模である。

 本予算案は、生活扶助基準の見直しによって3年間で総額670億円を削減するものである。そのうち、90億円は社会保障審議会生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)における検証結果を踏まえて、年齢、世帯、人員、地域差による影響を調整するとされており、580億円は「前回見直し(平成20年)以降の物価の動向」を勘案して削減するという。

 しかし、基準部会の検証結果を理由に生活保護基準の引下げを行うことが許されないことは、既に、本年1月25日付け「社会保障審議会生活保護基準部会の報告書に基づく生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明」において指摘したとおりである。

 それに加えて、本予算案は、削減額のほとんどが物価動向を理由としている点において、看過しがたい重大な問題がある。

 すなわち、1984年から今日に至るまで採用されている生活扶助基準改定方式である「水準均衡方式」は消費支出の動向に着目する方式であって、物価の動向を勘案するものではない。物価動向の勘案という、生活扶助基準改定方式の根本的な転換を行うのであれば、社会保障審議会(少なくとも基準部会)における慎重な検討を経ることが不可欠であるが、そのような検討は一切なされていない。

 また、この間の物価下落の主因は、家具・家事用品費及び教養娯楽費(特に家電製品)の大幅下落にあり、食料費の大幅な下落は見られず、光熱・水道費は高騰している。生活保護世帯は一般世帯に比して、食料費や光熱・水道費が家計に占める割合が大きく、教養娯楽費が占める割合は小さいことからすると、生活保護世帯が物価下落の恩恵を受けているとは言えない。仮に、物価動向を勘案するのであれば、少なくとも、こうした生活保護世帯に特有の支出割合を考慮する必要がある。しかし、厚生労働省が今回採用した「生活扶助相当CPI(物価指数)」は、一般世帯における品目ごとの支出額の割合をそのまま使っている上に、家賃、診療代、自動車、授業料等の生活扶助に該当しない品目の支出割合を除くことによって分母が減り、例えば教養娯楽費の支出割合が一般世帯以上に大きくなるなど、生活保護世帯と一般世帯の支出割合の乖離がむしろ増幅されることによって大幅な引下げをもたらす結果となっているのである。

 厚生労働大臣が生活保護基準を決定するにあたっての裁量判断の適否について、平成24年4月2日最高裁第二小法廷判決は、「判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべき」としている。かかる判断基準に照らせば、基準部会における検討も一切経ないまま生活扶助基準改定方式を根本的に転換し、検討されている物価指数の数値にも合理性が認められない生活保護基準の引下げが行われた場合、厚生労働大臣の判断には裁量権の逸脱・濫用があり違法であるといわねばならない。

 当連合会は、これまでも繰り返し生活保護基準の引下げに反対する意見を表明してきたが、改めて憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準である生活保護基準の引下げに強く反対するものである。

2013年(平成25年)3月26日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司

労働者福祉中央協議会(中央労福協):社会の底割れを招く生活保護費大幅削減の撤回を求める!(声明)

 政府は2013 年度予算案で生活保護の生活扶助基準を3年間で670 億円、期末一時扶助を含め総額740 億円を削減することを決めた。削減幅は平均6.5%(最大10%)で、96%の世帯で減額となる。
 生活保護基準は憲法25 条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を担保する最後のセーフティットである。その前例のない大幅引き下げは、生活保護利用者の生存権を脅かすだけでなく、国民生活全体に影響を及ぼし社会の底割れをもたらすものであり、到底容認することができない。
 したがって、引き下げ案は撤回し、再考すべきである。

◆ 専門家の検証結果を逸脱し、疑問だらけの「デフレ論」
 厚生労働省で専門家による検討を行った生活保護基準部会の報告書でも、自らの検証結果に限界を認め、安易な引き下げに警鐘を鳴らしている。政府案はそうした配慮を行わないばかりか、基準部会では一切議論されていない「デフレ論」を持ち出し削減額の9割近く(580 億円)の根拠にするなど、あまりに乱暴で「大幅削減の結論ありき」の恣意的な数字あわせと言わざるを得ない。
 この「デフレ論」の根拠や妥当性には多くの疑問がある。そもそも基準部会の検証(低所得世帯との消費実態比較)でもデフレの影響は反映しており、二重の引き下げではないのか。なぜ物価急騰のため基準の引き下げを見送った2008 年と比べるのか。物価の比較にあたって、低所得者の家計で占める割合の高い食料費や水道光熱費の比重が考慮されていないのではないか。
 今後アベノミクスで物価が上昇すれば、実質的な生活水準は更なる切り下げとなり過酷だ。

◆ 子どもの未来を奪い、貧困の連鎖を加速
 今回の案では子どもの数が多いほど減少幅が大きく、子育て世帯を直撃する。生活費が1割も削減されれば、高校・大学への進学の断念、部活や修学旅行の断念、高校中退の増加につながりかねず、子どもたちの未来を奪い貧困の連鎖が強まることが懸念される。

◆ 生活保護利用者だけでなく国民生活全般に大打撃
 生活保護基準が下がれば、現に生活保護を利用している人だけでなく、住民税や社会保険料、保育料等の負担が連動して上がったり、就学援助が打ち切られたりして、市民生活全体に影響を与える。
 最低賃金引き上げへのブレーキにもなりかねない。政府は「他の制度に波及しないようにしたい」と言っているが、自治体の権限や予算に関わるものに対しては、国は「お願い」しかできない。
 生活保護基準がナショナルミニマムである以上、連動する諸施策への波及を完全に遮断することはできないし、仮にできるとするならばナショナルミニマムとしての機能が損なわれることになる。

◆ 国会で徹底的に論議し、撤回・再考を!
 こうした様々な疑問や国民生活への影響について、国会において徹底的に審議し明らかにすべきである。疑問が解消されない以上、削減案は撤回・再考し、改めて生活保護基準のあり方や見直しのルールについて有識者や当事者参加のもとに検討を行うよう求める。

 以上

2013 年3 月6 日

 

 

ソーシャルワーカーは生活扶助費の削減に反対します(医療福祉関係4団体共同声明)

 本年1月29 日、政府は生活保護における生活扶助費の削減を盛り込んだ2013 年度予算案を閣議決定し、間もなく国会における予算審議が予定されています。私たちソーシャルワーカーは、社会福祉分野において、子ども、障がい者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活扶助費の削減には断固反対します。
 最低生活基準については、厚生労働省に置かれた社会保障審議会最低生活基準部会において、一般低所得世帯の消費実態と均衡が図られているか検証を行い、本年1 月18 日に報告書をまとめました。同部会は、検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意」するとともに、「生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、第1・十分位*の所得分布における動向に留意しつつ、なお今後の検証が必要である」ことを指摘して、生活扶助
基準の見直しには慎重に配慮すべきと言及しています。
 閣議決定した生活扶助費の削減は、2008 年と2011 年における生活扶助に相当する消費品目の消費者物価指数の比較によるデフレ調整分4.78%を根拠の一つとしています。しかしながら、この消費品目には生活保護受給者では元来支出割合が少ない教養娯楽費(マイナス7.3%)などが含まれています。最低生活費の主要消費品目である食料費はマイナス0.5%、光熱・水道費はマイナス1.2%(2012 年との比較においてはプラス2.8%)であることから、削減の明確な根拠はないと言えます。
 昨年来の一連の生活保護バッシングは、生活保護受給者の尊厳を深く傷つけることとなりましたが、生活扶助費の削減はそのことに追い打ちをかけることとなります。また、来年度から予定されている消費税率の引き上げは、社会保障の財源確保を理由としておきながら、保護受給者の消費可能額をさらに減らすこととなり、深刻な矛盾を生み出すこととなります。
 問題の所在は、国が定めた最低生活基準以下の生活を強いられている国民が多く存在していることであり、健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利が保障されていないことを強く訴えます。

2013年2月15日

社団法人日本精神保健福祉士協会
  会 長 柏 木 一 惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会
  会 長 佐 原 まち子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
  会 長 岡 本 民 夫
社団法人日本社会福祉士会
  会 長 山 村 睦

* 全世帯を所得階級別に10 等分したうち一番低い層の世帯。生活保護基準以下の世帯が多く含まれる。

賛同団体222団体の連名による「生活保護費を大幅削減する平成25年度予算案の撤回を求める緊急声明」

 先日、団体賛同をお願いした「『STOP!生活保護基準引き下げ』アクション/生活保護費を大幅削減する平成25年度予算案の撤回を求める緊急声明」について、以下のとおり、幅広い分野にわたって222団体より賛同をいただきました。 賛同団体の一覧はこちらから。
 ご賛同いただきました団体の皆さま、ありがとうございました。


印刷版(PDF)をダウンロード

STOP!生活保護基準引き下げアクション
生活保護費を大幅削減する平成25年度予算案の撤回を求める緊急声明


第1 はじめに
 本年1月29日,政府は,2013(平成25)年度予算案で生活保護の生活扶助基準を3年間で総額670億円削減することを決めた。削減幅は平均6.5%(最大10%)で,この基準引き下げによって受給額が減る世帯は96%に上るという。現行生活保護法が制定された1950年以来,生活保護基準が引き下げられたのは,2003年度(0.9%減)と2004年度(0.2%)の2回だけであり,今回は前例のない大幅引き下げである。
併せて,政府は,就労支援の強化,医療費扶助の適正化など「生活保護制度の見直し」によって450億円を削減することを決めたと報じられている。
 しかし,一方において,20兆円規模の緊急経済対策を打ち出し,公共事業等による財政出動を行うとしながら,生活保護基準の引き下げによって生活保護利用者をはじめとする低所得者層に対して負担増(実質的な増税)を強いるのは,政策そのものが根本において矛盾している。著しく公平を欠き,国家による「弱い者イジメ」というほかない。のみならず,以下述べるとおり,提示された予算案(以下,単に「予算案」という。)の考え方そのものが著しく恣意的で大きな問題があり,到底容認できない。
そこで,私たちは,予算案の撤回を求めて本緊急声明を発表するものである。

第2 生活扶助基準の引き下げによる保護費削減について
1 突然持ち出された「デフレ論」の問題点
(1)明らかに生活保護基準部会の検証結果を逸脱している。

 予算案は,生活扶助基準の見直しによって3年間で総額670億円の削減を図るとしているが,そのうち580億円については「前回見直し(平成20年)以降の物価の動向勘案」によるものであり,「(社会保障審議会)生活保護基準部会における検証結果を踏まえ,年齢・世帯人員・地域差による影響調整」による削減は90億円にとどまっている。つまり,削減額の9割近くは,いわゆる「デフレ論」によるものである。
しかし,現在の保護基準決定方式である水準均衡方式は,もともと「当該年度に想定される一般国民の消費動向に対応するよう,毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改定方式」(2003年12月16日生活保護制度の在り方に関する専門委員会「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」)であり,物価の要素を排除して保護基準は決められてきた(ちなみに,民間最終消費支出の平成25年度見通しは,実質で1.6%増となっている。「平成25年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」平成25年1月28日閣議了解)。したがって,基準部会の報告について,物価を考慮に入れることは,これまでの保護基準設定方式である消費水準均衡方式を放棄するものであって,保護基準にかかる根本的かつ重大な方針変更である。少なくとも基準部会はもとより社会保障審議会等での審議,了解抜きにはできないはずである。
 ところで,基準部会報告書自体にもさまざまな問題はあるが,社会保障審議会の専門部会として,貧困問題に詳しい専門家が13回にわたって議論した結果をとりまとめたものであるから,生活保護基準を改定するにあたっては最も重視すべきものである。
 ましてや,「デフレ論」は上記のように保護基準設定方式から排除されている要素であり,当然一切言及していない。さらに「デフレ論」についても,基準部会が比較の対象とした第1十分位(下位10%)の消費水準はデフレの影響によって下がってきているのであり,そのうえにさらにデフレの影響を考慮するというのは,「デフレのダブルカウント」である。
いずれにせよ,基準部会報告書は,全くないがしろにされたわけであるが,それは何故であろうか。それは,基準部会の検証結果に従えば,高齢世帯については逆に第1十分位(下位10%)の消費水準よりも生活保護基準の方が低く生活保護基準を引き上げなければならないこととなって削減効果が乏しくなるからとしか考えられない。すなわち,生活扶助費1割カットを公約に掲げた自民党の意向に従い,大幅削減(削減幅最大10%)の結論を導くために「デフレ論」を持ち出してきたのである。
 今回の予算案は,基準部会の検証結果を明らかに逸脱しており,このような考え方に基づく引き下げが断行された場合には,裁判所においても,厚生労働大臣の裁量権の逸脱濫用として違法と判断される可能性が高い

(2)物価が高騰した2008(平成20)年を比較対象とすることの恣意性
 予算案は,「前回見直し(平成20年)以降の物価の動向を勘案」するとして,比較対象を平成20年の物価に置いている。しかし,別添の表1と図1に明らかなように2008年(平成20年)は,消費者物価指数(10大品目総合)が102.1と突出して高騰した年である。これは原油高の影響を受けた物価高である。
 しかも,その前年の2007年末にも今回同様,生活保護基準の引き下げが政治課題となったが,「目下の原油高が物価に与える動向を見極める必要がある」として生活保護基準の引き下げは見送られたのである。つまり,物価高を理由に生活保護基準の見直しは見送られたにもかかわらず,その年の高い物価を基準にして生活保護基準を引下げようというのであるから論理矛盾もはなはだしい。
 そもそも,「デフレ論」は「デフレで物価が下がっているのに生活保護基準は下がっていないから下げるべきだ」というものであるから,仮にこの理屈をとるのであれば比較対象とすべきは前回生活保護基準が下げられた2004(平成16)年の消費者物価指数のはずである。別添の表1のとおり,2004年の消費者物価指数(10大品目総合)は100.7であって,2011年,2012年のそれ(99.7)と比べると1ポイントしか下がっていない。
 2008年を比較対象としたのは,2.4ポイントという高い下落幅をもって大幅な基準引き下げの結論を得るためであって牽強付会の屁理屈以外の何物でもない。

(3)物価が大きく下がっているのは「ぜいたく品」であって,生活費や光熱費はむしろ上がっている
 図表







 上記の表に明らかなとおり,物価が大きく下落しているのは家具等(2004年から2012年に22.5ポイント下落)と教養娯楽(同前14.3ポイント下落。中でも電化製品等の耐久消費財の下落幅が大きい)であって,食料(同前2ポイント上昇),水道光熱費(同前14ポイント上昇),被服・履物(同前0.2ポイント上昇)などの生活費についてはむしろ上昇している。
別添の表2と図2~5のように,低所得者ほど家計の中で食費や光熱費が占める割合が高く,家具等や教養娯楽費については逆の傾向があることからすると,低所得者層の生活はむしろ厳しくなっているのが実態である。
だとすれば,仮に消費者物価指数を比較対象とするにしても,こうした傾向を考慮して,耐久消費財や教養娯楽費については除外又は比重を落とすなどするべきである。
そうすると,特に食費や水道光熱費が高騰し,低所得者層の消費生活が厳しくなっている中で,低所得者層全般の所得水準を押し下げる効果を持つ生活保護基準は引き下げるべきではないという,2007年の検証時と同様の結論になるのが当然であって,消費者物価指数を理由に保護基準を引下げるという結論になどなりようがない。
なお,既に2012年の消費者物価指数は発表されているにもかかわらず,何故か予算案は2011年の指数を比較対象としている。これは,2011年から2012年にかけて,家具等や教養娯楽費等の「ぜいたく品」の物価が下落し,食料,水道光熱費等の生活費が高騰するという傾向がより顕著になっていることによるのではないかと推察される。

2 子育て世帯への打撃が大きく「貧困の連鎖」が強化される
 予算案での生活扶助費の減少幅は,例えば,
  ①夫婦と子1人の世帯(都市部)で17.2万円から15.6万円に1.6万円減少
  ②夫婦と子2人の世帯(同上)で22.2万円から20.2万円に2万円減少
  ③母と子1人の世帯(同上)で15万円から14.1万円に0.9万円減少
となっており,子どもの数が多いほど大きく,子育て世帯に過酷な内容となっている。
生活保護世帯における「貧困の連鎖」がかねてから問題とされ,その解消のために生活支援戦略において学習支援の強化などの方策をとろうとする一方で,子育て世帯への現金支給を大幅に減額するというのは,明らかに矛盾している。こうした引き下げが実施されれば,生活保護世帯の子どもたちは,ますます厳しい状況に追い込まれ,生活保護世帯の子どもたちは長じて生活保護から脱却することができず,「貧困の連鎖」が強まることが必至である。
また,予算案では,20~40歳の単身者(都市部)については,7000円削減するとされているが,生活保護利用者にとって,7000円の減額は単身者なら1週間の生活費に相当するほどの極めて「大きな」金額である。ましてや,より費用のかかる多人数世帯で2万円にも及ぶ減額となれば,その暮らしへの影響は計り知れない。親が十分に働くことのできない事情や子どもの障害や病気の有無などに対して何ら考慮もなく,単に数字の比較だけで一律に引き下げを行えば,その先にどのような悲劇が待っているのか,過去に発生した餓死事件や心中事件を思えば火を見るよりも明らかである。段階的引き下げなどという小手先の激変緩和措置を行っても,現実の生活は確実に困窮度を増すものであり,徐々に慣らされれば生き抜けるというレベルの問題ではない。

3 生活保護利用者だけではない国民生活全般への打撃
(1)最低賃金,就学援助・地方税非課税・保険料減免等の基準も連動して下がり,低所得者層全般の収入減(負担増)となる

 言うまでもなく生活保護基準は,憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって,我が国における生存権保障の水準を決するナショナル・ミニマムである。生活保護基準が下がれば,最低賃金の引き上げ目標額が下がり,地域によっては最低賃金そのものが下がって,労働者(特に時給800円,850円で働いている低賃金労働者)の労働条件に大きな影響が及ぶ。
 また,生活保護基準は,地方税の非課税基準,介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準,就学援助の給付対象基準など,福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動している。
 生活保護基準の引下げは,現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく,今や国民の多数を占めるに至っている低所得層の収入減(負担増)を招き,市民生活全体に大きな影響を与えるのである。
 低所得層には貯蓄する余裕がなく収入のほとんどを消費に回すため,低所得層の収入減少は消費の減少に直結する。そうすると,デフレを理由に生活保護基準を引き下げながら,さらなるデフレを招くという負のスパイラルに陥ることが明らかであって,経済政策としても愚策というほかない。


(2) 生活保護基準がナショナル・ミニマムである以上,他制度への波及を回避することは不可能である
 ここに来て,特に就学援助への連動に対する批判の声が強いことから,自民党は,こうした制度への波及が及ばないようにする旨言及し始めている。
 しかしながら,最も多くの人への影響があると思われる最低賃金との関係について言えば,改正最低賃金法9条3項において,地域別最低賃金を決定する場合には,労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう,生活保護に係る施策との整合性に配慮しなければならないこと(つまり,最低賃金は生活保護基準を上回るよう改善しなければならないこと)が明記されており,法改正をしない限り,最低賃金への波及効果を避けることはできない。また,地方税の非課税基準についても,法令によって,級地(地域)によって生活保護基準の1.0倍,0.9倍,0.8倍の金額を参酌して定めるべきことが明記されている(地方税法295条,同法施行令47条の3,同法施行規則9条の2の3)。
 さらに,最低生活費の計算等において生活保護基準を用いている永住帰国した中国残留邦人等への支援給付(4687世帯7230人)や,ハンセン病国家賠償訴訟で和解に応じ,国立ハンセン病療養所に入ったことのない患者の給与金(4世帯),療養所入所者とは別居している家族への生活援護費(33世帯35人)については,保護基準と連動して下がらざるを得ないことを厚生労働省自体が認めている(2013年02月1日毎日新聞朝刊)。
 田村厚生労働大臣などは,しきりに就学援助制度への波及を回避すると発言しているが,それは実際には実現不可能である。すなわち,2005年に生活保護に準じる程度に困窮している「準要保護者」についての国庫補助は廃止され,一般財源化(交付税措置)されたことによって,就学援助制度の実施は完全に地方自治体に委ねられている。そのため,就学援助制度の実施状況は地方自治体の財政状況によって相当のばらつきがあるのが実態である。国が,この国庫補助制度を復活させるのであればともかく,そのようなことはあり得ない。そうすると,国にできることは地方に「お願い」することだけであるが,平成25年度予算では,地方交付税についても2013億円(▲1.2%)削減されている中,財政状況の厳しい地方が「お願い」に応じることもあり得ない。参議院選後に生活保護基準が引き下げられた後に,「検討したが,やはり無理だった」とされることが目に見えている。現在,与党が言っていることは,他制度への波及が及ばないようにしてもらえると他制度の利用者に期待させることによって,批判を沈静化させるためのまやかしに過ぎない。
 いずれにせよ,先に述べたとおり,生活保護基準がわが国の生存権保障水準を画する岩盤(ナショナル・ミニマム)である以上,これを下げながら,連動する諸施策の水準のみを維持するということ自体が論理矛盾であって,諸施策への波及を回避することはできないのである。
 仮に,何らかの方法で当面の間,諸施策の波及効果を回避することが可能であり,それが実施されたとすれば,逆に何故そこまでして生活保護基準を下げることにこだわらなければならないのか理解に苦しむ。まさに,生活保護利用者に対する差別であり,「国家的イジメ」であると言うほかない。

第3 生活保護制度の見直しによる保護費削減について
 今回の予算案では,生活扶助基準の引き下げと併せて,就労支援の強化等の生活保護制度の見直しによって,450億円の保護費を削減するとしている。この問題点については,ほとんど報じられていないが,実は,生活扶助基準の引き下げと勝るとも劣らないほどの害悪の発生が予想される。
 生活保護基準の検証と並行して社会保障審議会に設置されていた生活困窮者の支援の在り方に関する特別部会は,本年1月25日,報告書をとりまとめた。同報告書の中には評価できる新たな取り組みに関する記載も少なくはないが,生活保護制度の見直しについては,3~6か月の期間を定めて集中的に就労支援(指導)を行い,希望の職種につけない者については地域や職種を変えて就職活動をすることや低額でもまず就労することを基本とすべきことが打ち出されている。
 この見直し案については,例えば,3か月経過しても希望の職に就職できない者に対して,本人が希望しない就職先が他地域にあるから転居して就職活動をするよう指導指示をし,これに従わないことを理由に指導指示違反で保護を廃止するような,形式的かつ厳格な運用がなされ得ることについて危惧が表明されてきていたが,上記のとおり,450億円の保護費削減という数値目標が設定されたことによって,厚生労働省や会計検査院による監査強化の中で,この危惧が現実のものとなる危険が飛躍的に高まっている。
かつて「厚生労働省の直轄地」「保護行政の優等生」と言われていた北九州市においては,2005年から2007年にかけて生活保護をめぐる餓死事件や自殺事件が連続して発生した。同市においては,保護費は年間300億円を上回らないようにするという数値目標を実現するために,「闇の北九州方式」と呼ばれる,各福祉事務所ごとにノルマを課して保護実施件数の総数管理を行った結果,こうした悲劇が頻発したのである。
450億円削減という数値目標は,稼働年齢層を生活保護の利用から排斥するという形で全国的に同様の悲劇を頻発させる危険が高く,到底容認できない。

                                       以 上
[添付資料]表1,図1/ 表2,図2~5

(注)
1) 基準部会報告書が第1十分位(下位10%)の消費水準と保護基準との比較を行っていることの問題点については,生活保護問題対策全国会議の下記声明等をご参照  本文に戻る
 ・2012(平成24)年11月14日「第11回社会保障審議会・生活保護基準部会を踏まえての緊急声明」http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-87.html
 ・2013(平成25)年1月16日「社会保障審議会第12回生活保護基準部会を踏まえての緊急声明」http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-95.html
2) 2013(平成25)年1月22日「子どもの貧困の連鎖を強め,市民生活全体に影響を与える生活保護基準の引き下げを行わないよう求める要請書」  本文に戻る
 http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-97.html
3) 2013(25)年1月25日日弁連
 「社会保障審議会生活保護基準部会の報告に基づく生活保護基準の引き下げに強く反対する会長声明」 本文に戻る
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130125.html
4) 同報告書の問題点の詳細については,生活保護問題対策全国会議の下記意見書等をご参照。 本文に戻る
 ・2012年10月10日「「生活支援戦略」に関する厚生労働省案に対する意見書」
 http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-83.html
 ・2013年1月16日 社会保障審議会特別部会 藤田委員提出資料「報告書案についての意見
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002sr2w-att/2r9852000002sr5r.pdf

〈賛同団体〉
生活保護問題対策全国会議,社会福祉法人聖フランシスコ会,NPO法人多重債務による自死をなくす会コアセンター・コスモス,クオータ制の実現をめざす会ひろしま,全国借地借家人組合連合会,東京借地借家人組合連合会,NPO法人自立生活サポートセンター・もやい,ホームレス総合相談ネットワーク,ホームレス法的支援者交流会,特定非営利活動法人反貧困ネットワーク広島,きょうと夜まわりの会,生存権裁判を支援する全国連絡会,全日本民主医療機関連合会,近畿生活保護支援法律家ネットワーク,全国「餓死」「孤立死」問題調査団,反貧困ネットワーク大阪,北陸生活保護支援ネット福井,カトリック社会活動神戸センター,兵庫県精神障害者連絡会,首都圏生活保護支援法律家ネットワーク,全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会,泉州・精神障害者倶楽部「青い鳥」,関西合同労働組合,オープンハンドまつやま,生活保護支援ネットワーク静岡,移住連貧困プロジェクト,全国クレジット・サラ金問題対策協議会,国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会,教育の機会均等を作る「奨学金」を考える連絡会(奨学金連絡会),首都圏なかまユニオン,怒っているぞ!障害者切りすて!ネットワーク関西,和歌山クレジット・サラ金問題対策協議会,反貧困ネットワークあいち,東海生活保護利用支援ネットワーク,反貧困ネットワーク信州,働く女性の全国センター,福岡クレジット・サラ金被害をなくす会,クレサラ被害をなくすネットワーク,大牟田しらぬひの会,特定非営利活動法人熊本クレ・サラ被害をなくす会,特定非営利活動法人大分クレジットサラ金被害者の会まなびの会,長崎あじさいの会,鹿児島くすのきの会,沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会,レインボーの会,障害者(児)を守る全大阪連絡協議会,特定非営利法人愛知かきつばたの会,特定非営利法人西濃れんげの会,三重はなしょうぶの会,静岡ふじみの会,反貧困ネットワーク京都,一般社団法人自由と生存の家,山梨県大月生活と健康を守る会,障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協),全国労働組合総連合,笹島診療所,生活保障ボランティアの会,平和憲法を守る荒川の会,アルバイト・派遣・パート関西労働組合神戸事務所,寿日雇労働者組合,寿炊き出しの会,神奈川県全県夜回り・パトロール交流会,日本基督教団神奈川教区寿地区センター,寿越冬実行委員会,ぎふ反貧困ネットワーク,ぎふ派遣労働者サポートセンター・結,夜まわり三鷹,生存権裁判を支援する全国連絡会,全国生活と健康を守る会連合会,特定非営利法人ろばと野草の会,新潟生存権裁判弁護団,金沢夜回りの会,行政の生活再建の充実を求める全国会議,生活保護支援九州ネットワーク,大阪クレジット・サラ金被害者の会(いちょうの会),尼崎あすひらく会,京都平安の会,和歌山あざみの会,生活困窮者連絡協議会,怒っているぞ!障害者切すて!全国ネットワーク,派遣労働ネットワーク関西,全国追い出し屋対策会議,NPO法人くまもと支援の会,全国公的扶助研究会,日本バプテスト連盟ホームレス支援特別委員会,特定非営利法人生活相談サポートセンター,NPO法人かごしまホームレス生活者支えあう会,堅川救援会,NPO法人エスエスエス,東北生活保護利用支援ネットワーク,にいがた青年ユニオン,NPO法人さんきゅうハウス,野宿者のための静岡パトロール,神戸公務員ボランティア,渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合(のじれん),成城墨岡地域援助心理研究所,有限会社おとくに福祉研究所,日本労働者共同組合(ワーカーズコープ)連合会,全大阪生活と健康を守る会連合会,全医労京都地区協議会,SIESTA(シエスタ),港生活と健康を守る会,岸和田生活と健康を守る会,全国福祉保育労働組合,全国生活保護裁判支援連絡会,RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク),カミイカナイト!!!,子どもの人権を考える会,子ども達の平和・人権・教育を考える会,此花生活と健康を守る会,航思社,DPI日本会議,自由労働者連合,市民の意見30の会・東京,蕗の会職員組合,反貧困みやぎネットワーク,一般社団法人クレオソーレ,嘉飯山地区精神障害者家族会いずみ会,八尾生活と健康を守る会,フリーターユニオン福岡,京都生協の働く仲間の会,首都圏青年ユニオン青年非正規労働センター,高知クレジット・サラ金問題対策協議会,こうち包摂ネットワーク「よりそいびと」,ビデオ工房AKAME,反貧困ネットワーク,カラカサン~移住女性のためのエンパワメントセンター,首都圏青年ユニオン,障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連),反貧困たすけあいネットワーク,千葉青年ユニオン,松原生活と健康を守る会,障害者生活支援センターぐっどらいふ,特定非営利活動法人ジョイフルさつき,生存権裁判を支える愛媛の会,熊本県民主医療機関連合会,フリーター全般労働組合,歯科保健研究会,釜ヶ崎講座,きょうされん大阪支部,埼玉県民主医療機関連合会,高知県商工団体連合会,NPO法人神戸の冬を支える会,高知県商工団体連合会共済会,高知県商工団体婦人部協議会,高知クレジット・サラ金問題対策協議会,よつかいどう市民ネットワーク,三多摩自由労働者組合,石川県社会保障推進協議会,貧困ビジネス対策全国連絡会,堺こころのピアズ,反貧困ネットワーク栃木,市民ネットワーク・市川,アジア女性資料センター,政治的ミニスカ党,コモン・プラス,カワセミの会,市民ネットワークちば,関西非正規等労働組合(ユニオンぼちぼち),社団法人日本精神保健福祉士協会,「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会,ゆにおん同愛会,一般社団法人発達・精神サポートネットワーク,発達障害の学びと交流会,NPO法人POSSE,ホームレス支援と貧困問題を考えるこうちの会(こうちネットホップ),神奈川労働相談ネットワーク,東京災害支援ネット(とすねっと),精神障害者地域生活支援とうきょう会議,山谷労働者福祉会館活動委員会,時をみつめる会,全国「精神病」者集団,市民ネットワーク千葉県,企業組合あうん,フードバンク,隅田川医療相談会,薪の会,ハンセン病首都圏市民の会,非正規労働者の権利実現全国会議,高知県医療労働組合連合会,日本自立生活センター,高知県青年司法書士協議会,日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会,大阪ダルクアソシエーション,被災地障がい者センターみやぎ,被災地障がい者センター石巻,市民ネットワーク・ふなばし,全国青年司法書士協議会,かりん燈-万人の所得保障を目指す介助者の会,市民ネットワークちば・中央,精神障害者家族会新宿フレンズ,なかまユニオン,特定非営利活動法人大阪医療ソーシャルワーカー協会,日本高齢者生活共同組合連合会,あいち社保協,NPO法人労働と人権サポートセンター・大阪,四国生活保護支援法律家ネットワーク,青森生存権裁判を支援する会,特定非営利活動法人日本障害者センター,全国肢体障害者団体連絡協議会,一般社団法人全日本視覚障害者協議会,障害者の生活と権利を守る千葉県連絡協議会,障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会,障害児者の生活と権利を守る神奈川県連絡協議会,愛知県障害者(児)の生活と権利を守る連絡協議会,障害者と家族のくらしと権利を守る広島連絡会,障害者の生活と権利を守る福岡県連絡協議会,愛知肢体障害者こぶしの会,愛知肢体障害者こぶしの会名古屋支部,障害者とともに歩む麦の会,大阪肢体障害者団体連絡協議会,肢体障害者二次障害検討会,広島肢体障害者の会,福岡肢体障害者の会,神奈川視覚障害者の生活と権利を守る会,福岡県視覚障害者友好協会,北陸生活保護支援ネットワーク石川,高知県民主医療機関連合会,全日本教職員組合,日本高等学校教職員組合,びわ湖あおぞら会,NPO法人女性ネットSaya-Saya,京都健康よろずプラザ(計222団体)

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