「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

平成25年6月6日

「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

 

「STOP!生活保護基準引き下げ」アクション

呼びかけ人代表 宇都宮健児

 

現在、国会で審議中の生活保護法改正案(以下「改正案」という)について、①違法な「水際作戦」を合法化し、②親族の扶養を事実上生活保護の要件とするものとして、多くの批判が寄せられていましたが、その後、民主、自民、公明、みんなの4党が、①の点については、申請書や添付書類の提出を必須の要件とはしない内容に修正することで大筋で合意しました。

しかし、②の扶養義務の強化の点については修正合意の対象となっておらず、未だ問題は解決されていません。DV等の被害者が生活保護申請をした場合にも扶養義務者たる夫に通知(改正法24条8項)や調査(同28条、29条)がなされないとも限りらず、また、これらの規定の存在により、DV被害者に限らず、家族関係に問題を抱える人が親族への通知や調査がなされることを恐れて、困窮状態に陥っても生活保護申請さえためらうことになりかねません。

また,①の点についても,申請書や添付書類の提出を要するのを原則としている点で当初の案と修正合意で何ら変わりはなく,行政側において,特別の事情があると判断した場合のみ,書類の提出を要しないとするものにすぎません。

このような修正合意では,残念なことに、困窮している方々が、保護を必要とするときに申請しやすく、安心と安全をスムーズに取り戻すための支援にたどり着くという本来の法律の目的から大きく後退し、生活困窮者をその制度から排除させることを目的とする改正と受け取らざるを得ません。

申請時における申請要件を煩雑にすれば、生活保護を一刻も早く必要としながらも、混乱と困窮の中にある多くの人々をその制度から遠ざけます。それは、とりもなおさず困窮している人々を「生きること」から暗転させ、餓死や凍死、絶望による自死や飢餓状態を脱するための犯罪に走るなどの無用な社会的廃退を蔓延させることになるでしょう。

また,③改正案には、後発医薬品の事実上の使用義務づけ(同34条3項)、被保護者の生活上の責務(同60条)、保護金品からの不正受給徴収金の徴収(同78条の2)など、生活保護制度の中にある利用者にとっても、大きな影響をもたらす問題があります。これらは,およそ性悪説を困窮者の前提とした、暮らしと心に鞭打つ「改正」となっており、これもまた「生きようとすること」への意欲を大きく後退させ、結果として、努力や治療など、その人にとっての「自立」からさらに遠のく結果を招くでしょう。

生活保護制度は、国民がここで安心して生きる権利や、より幸福に暮らす権利を保障する、すべての国民にとって大変重要な制度です。今回、生活保護法が「改正」に向けて、充分な審議もなされないままに推し進められています。命や暮らしに関わるあらゆる制度は、その制度を必要とする人の意見を元に議論がなされるべきです。今回の改正は、年金や医療、最低賃金などあらゆる側面から検証しても、すべての国民の生活の礎である生活保護制度が、当事者の意見はもとより、専門家の審議さえ充分に図りもせず、改正の理由や改正後の予測を十分に精査することもなく、拙速になされようとしていることに、私たちは強い危機感を抱かざるを得ません。

国民を幸福に導かない法改正はいますぐ白紙撤回し、より幸福で安心な社会を目指すための、建設的な議論を、あらためて構築することを求めます。

 

※この記事のリンク用短縮URLです。⇒ http://nationalminimum.xrea.jp/sa130606

以上

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