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生活保護基準引下げに対し強く反対する総会決議(東北生活保護利用声援ネットワーク)

生活保護基準引下げに対し強く反対する総会決議

1 有名芸能人の親族が生活保護を受給していたことへの批判から端を発した「生活保護バッシング」を契機として、生活保護基準を引き下げようという動きが加速している。
具体的には、以下のようなものである。

①平成24年8月10日に国会で成立した社会保障制度改革推進法の附則第2条では、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化」という文言が入れられた。
②平成24年8月17日に政府が閣議決定した「平成25年度予算の概算要求組替え基準について」では、「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を平成25年度予算に反映させるなど極力圧縮に努める」ものとされた。
③平成24年10月22日に財務省が財政制度等審議会に生活保護基準の切下げに向けた具体的提言を行い、同審議会では生活保護の見直しに向けた議論が始められた。
④厚生労働省が公表した平成25年度の予算概算要求の主要事項では、「生活保護基準の検証・見直しの具体的内容については、予算編成過程で検討する」とされている。そして、平成24年10月5日に開催された社会保障審議会生活保護基準部会で、厚生労働省は、第1十分位(全世帯を10の所得階層に分けた場合、その最も低い所得の世帯の層)の消費水準と現行の生活扶助基準額とを比較するという検証方法を取ることを提案した。
このまま行けば、年内には、生活保護基準の引下げが決定されてしまう可能性がある。

2 しかし、このような引下げの動きは、日々、電話での相談受付や申請への同行などの活動を通して生活保護の問題に取り組む当ネットワークとして、到底看過することはできないものである。
そもそも、生活保護制度は、憲法25条が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定していることに基づくものである。したがって、生活保護基準というものは、この「最低限度の生活」を保障できるものでなければならない。
この点、現在、生活保護を受給しながら生活をしている受給者の方の生活状況は、決して余裕のあるものではなく、切り詰めながらつつましく生活をしているというのが実態である。
 それにも関わらず、現行の生活保護基準を引き下げるということになれば、生活保護受給者の方々の生命や健康に関わる事態になりかねない。
 また、生活保護基準の引下げの影響は、生活保護受給者の方々だけにとどまらない。
 国や地方自治体の制度の中には、低所得者向けの施策を受けられるか否かの基準を定める際、生活保護基準の何倍というような定め方をしている例が少なくない。それらは、例えば、地方税の非課税基準、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免基準、介護保険の保険料・利用料の減額基準、障害者自立支援法による利用料の減額基準、就学援助の給付対象基準などである。
 もし生活保護基準が引き下げられることになれば、こういった制度によって生活が支えられている、生活保護受給者以外の低所得者世帯の生活にも多大な影響を与えることになる。

3 これに対し、①生活保護基準が最低賃金額や国民年金支給額よりも高額である、②現在の国の財政事情を考えると引下げはやむを得ないという主張がなされることがある。
 しかし、①最低賃金額や国民年金支給額との比較については、生活保護基準を引き下げる議論に向かうべきではなく、むしろそれらの水準が低く生活を維持していくに足りないという現実を直視して、それらを引き上げる方向に向かうべきである。
 また、②現在の国の財政事情を指摘する意見についても、国民の「最低限度の生活」を国が保障するという生活保護制度の重要性や、生活保護費のGDPに対する割合がOECD加盟国平均2.0%に対して日本は0.6%(2007年(平成19年))とまだまだ低いこと、真の問題は生活保護の利用率が諸外国に比べて低く(例えば2010年(平成22年)のドイツにおける生活保護の利用率が9.7%であるのに対し、同年の日本は1.6%)、十分に生存権の保障がなされていないことであることなどを踏まえれば、生活保護基準の引下げを行うのは早計である。

4 当ネットワークは、生活保護制度を、利用する方にとって利用しやすく、その方の自立に資する制度にさらに改善していくことを求めると同時に、今般の生活保護基準の引下げに強く反対することを決議する。

平成24年11月16日
東北生活保護利用支援ネットワーク

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