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東京災害支援ネット(とすねっと)《生活保護法一部改正法案の廃案を求める要望書》

東京災害支援ネット(とすねっと)災害支援団体として生活保護法一部改正法案の廃案を求める要望書》を、2013年5月25日、正当団体宛執行しました。全文を転載させていただきます。

☆転載開始☆

要 望 書

PDF→ http://goo.gl/t3S7S

 

とすねっと要望書第37号

2013年5月25日

政党各位

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代 表(弁護士)  森 川   清

(事務局)

東京都豊島区駒込 1-43-14 SK90ビル 302

  森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108

 

私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。

今般、生活保護法の一部を改正する法律案が国会に上程・審議されているが、本法案は、災害時の生存権保障の観点から重大な問題があると言わざるを得ず、廃案を求めるものである。

 

第1 要望の趣旨

生活保護法の一部を改正する法律案を廃案するよう求める。

 

第2 要望の理由

1 現在、生活保護法の一部を改正する法律案(以下、「法案」という。)が国会に上程、審議されている。

法案は、申請による保護の開始及び変更について条文(第24条)を新設し、これまで口頭で申請することが可能であった生活保護の開始及び変更の申請について、書面主義を採用していることが最大の改正点である。

法案では「厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。」(第24条第1項柱書)とし、さらに「前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。」(同条第2項)としている。すなわち、申請書及び添付書類を提出しない者は申請による保護の開始をすることができない仕組みである。

2 平成23年3月11日、日本を襲った東日本大震災や福島原発事故により、多くの被災者・被害者が、その生活の基盤をすべて奪われ、着の身着のままで避難をすることを余儀なくされた。特に、生活困窮者は、生活の基盤が奪われると、生活を続けることは困難となるので、憲法25条の生存権の保障を全うするため、速やかに保護を開始する必要があった。そこで、国は、震災直後の3月17日「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取り扱いについて」を発して、迅速かつ適切な保護の実施を周知徹底した。

3 しかしながら、現在の災害時の混乱状況の中において、もし法案が可決すると、法案の規定する申請書に記載すべき資産及び収入の状況(第24条第1項第4号参照)を把握することができないなどの事情が生じることが考えられ、申請者は申請書の記載に支障を来たし、申請書の提出を躊躇することが予想される。また、関係機関の機能不全により、法案の規定する添付書類を収集することは極めて困難であるにもかかわらず、速やかに保護を開始することができないという最悪な事態に陥るおそれが極めて高い。

法案が成立することによって、かかる事態を生じさせることは、憲法25条の保障をないがしろにするものであり、違憲な行為であると言わざるをえない。

4 災害が発生した際には、厚生労働省が申請書類の提出について柔軟に対処するよう求める通知等を発し、運用によって乗り切るという考えもあるかもしれない。しかし、上記のような運用が通知されたとしても、法律に書面主義が明記されている以上、法律に従った申請書の記載事項の欠缺や添付書類の添付がないことを理由に申請が却下された場合には、不服申立てをすることができない。運用によって法律を変えることはできないからである。

書面主義の採用は、生活困窮者の状況に応じた生活保護法の柔軟な運用を妨げる要因にもなりかねないのである。

5 加えて、各自治体の生活保護行政の窓口では、現在においても、保護を抑制しようとする違法・不当な申請権侵害または受給権侵害が繰り返されている。

東日本大震災による被災や被害で避難している方でさえ、被災地・被害地の自治体で保護を受けるよう水際で申請権を侵害するという行政対応は少なからず報告され、義援金や原発事故仮払補償金を受け取ったことをもって保護廃止されるなど、苦しめられた経験がある。

このような憲法で保障された生存権をないがしろにする行政対応は、決して許されないものであるが、法案が可決されると、今以上に抑制姿勢が明確となり、有事において深刻な結果を惹起しかねない問題である。

6 日本は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)を批准している。国連の社会権規約委員会は、このほど、「生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう、締約国(注・日本)に対して求める。」との勧告(日本政府の第3回定期報告書に関する総括所見)を出した。書面主義によって申請手続を現在以上に煩雑なものに改悪することは、基本的人権である社会権の国際的なスタンダードからも許されないことである。

7 このように、法案による書面主義の採用は、憲法25条によって保障された生活保護の申請権・受給権の侵害に拍車をかけるおそれが大きいばかりでなく、いざ大規模災害が発生した際に、人命にさえ影響を及ぼし、国際的にも批判されるような内容であるので、これを成立させることは許されない。

よって、すみやかに、法案は廃案されるべきである。

以上

☆転載終了☆

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