日本司法書士会連合会《生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明》

日本司法書士会連合会が《生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明》を2013年5月29日に発表しました。全文を転載させていただきます。

☆転載開始☆

生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明

日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司

政府は,生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)の今国会での成立を目指し,本年5月17日に閣議決定した。この改正案には,①行政窓口における,いわゆる「水際作戦」を合法化させる,②生活保護の申請に対し萎縮的効果を生み,本当に必要な人が申請できなくなる,という問題を含んでいることから,今般の改正案の内容で生活保護法を改正することに反対する。

まず,申請の際に提出する書類について,改正案では「要保護者の資産及び収入の状況」その他「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出しなければならない(改正案第24条第1項)とし,申請書には保護の要否判定に必要な「厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」(同条第2項)としている。現行生活保護法では,申請書の提出や書類の添付は保護申請の要件とされず,保護申請の意思があれば,まずはこれを受け付け,実施機関側がその責任において調査権限を行使し,必要書類を収集し保護の要否判定を行うこととしている。しかし,改正案では,申請者側に必要書類を収集して提出する義務を定め,事実上,申請者自身が要保護状態であることを証明しなければならなくなる。
これにより,次のような問題が生じると考えられる。
① ホームレス状態の人やDVで自分の荷物をまったく持たずに逃げてきた人などは,保護申請に必要な書類を提出することができないこと
② 居宅がある人でも心身に障害を抱えた人は,外出も容易でない人が多く,必要書類を揃えるのも時間がかかり,適切な時期に保護申請ができないこと
③ 成年後見人が成年被後見人に代わって保護申請をする場合は,事理弁識能力を欠く常況にある被後見人とコミュニケーションを取ることも難しいことから,必要書類をすべて揃えられる可能性が低く,適切な時期に保護申請できないこと
このように改正案は,現在全国の生活保護行政で行われている「水際作戦」と呼ばれる,現行法では認められていない違法な申請権侵害行為を合法化するものであって,到底容認できるものでない。
 
次に,保護の実施機関に対し,改正案では,保護開始の決定をしようとするときは,あらかじめ扶養義務者に対して,厚生労働省令で定める事項を通知することを義務付けている(改正案第24条第8項)。しかし,現実には,保護申請を行う際に,それまでの関係を考え,扶養義務者への通知により親族とあつれきが生じるのを恐れて申請を断念する場合も多く,すでに生活保護受給中の者についても,扶養義務者に対する通知が行われることになることから,保護申請や保護受給がしにくくなることは明らかである。
さらに,扶養義務者への通知を義務化し,調査対象を拡大することによって,扶養義務者への通知が法律上避けられないものとなると,扶養義務者の多い者ほど生活保護を受けにくくなり,生活保護法の無差別平等原則に反することとなると考える。
 
改正案は,すでに各自治体で行われている自死対策や餓死・孤立死対策をも有名無実化し,再び多くの自死・餓死・孤立死等の温床になる恐れがあり,日本国憲法の生存権保障(憲法第25条)の理念に抵触するものである。よって,これまで多くの生活保護者に対する支援を行ってきた当連合会は,今般の生活保護法の改正に反対し,法案提出をしないよう求めるものである。

☆転載終了☆

東京災害支援ネット(とすねっと)《生活保護法一部改正法案の廃案を求める要望書》

東京災害支援ネット(とすねっと)災害支援団体として生活保護法一部改正法案の廃案を求める要望書》を、2013年5月25日、正当団体宛執行しました。全文を転載させていただきます。

☆転載開始☆

要 望 書

PDF→ http://goo.gl/t3S7S

 

とすねっと要望書第37号

2013年5月25日

政党各位

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代 表(弁護士)  森 川   清

(事務局)

東京都豊島区駒込 1-43-14 SK90ビル 302

  森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108

 

私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。

今般、生活保護法の一部を改正する法律案が国会に上程・審議されているが、本法案は、災害時の生存権保障の観点から重大な問題があると言わざるを得ず、廃案を求めるものである。

 

第1 要望の趣旨

生活保護法の一部を改正する法律案を廃案するよう求める。

 

第2 要望の理由

1 現在、生活保護法の一部を改正する法律案(以下、「法案」という。)が国会に上程、審議されている。

法案は、申請による保護の開始及び変更について条文(第24条)を新設し、これまで口頭で申請することが可能であった生活保護の開始及び変更の申請について、書面主義を採用していることが最大の改正点である。

法案では「厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。」(第24条第1項柱書)とし、さらに「前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。」(同条第2項)としている。すなわち、申請書及び添付書類を提出しない者は申請による保護の開始をすることができない仕組みである。

2 平成23年3月11日、日本を襲った東日本大震災や福島原発事故により、多くの被災者・被害者が、その生活の基盤をすべて奪われ、着の身着のままで避難をすることを余儀なくされた。特に、生活困窮者は、生活の基盤が奪われると、生活を続けることは困難となるので、憲法25条の生存権の保障を全うするため、速やかに保護を開始する必要があった。そこで、国は、震災直後の3月17日「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取り扱いについて」を発して、迅速かつ適切な保護の実施を周知徹底した。

3 しかしながら、現在の災害時の混乱状況の中において、もし法案が可決すると、法案の規定する申請書に記載すべき資産及び収入の状況(第24条第1項第4号参照)を把握することができないなどの事情が生じることが考えられ、申請者は申請書の記載に支障を来たし、申請書の提出を躊躇することが予想される。また、関係機関の機能不全により、法案の規定する添付書類を収集することは極めて困難であるにもかかわらず、速やかに保護を開始することができないという最悪な事態に陥るおそれが極めて高い。

法案が成立することによって、かかる事態を生じさせることは、憲法25条の保障をないがしろにするものであり、違憲な行為であると言わざるをえない。

4 災害が発生した際には、厚生労働省が申請書類の提出について柔軟に対処するよう求める通知等を発し、運用によって乗り切るという考えもあるかもしれない。しかし、上記のような運用が通知されたとしても、法律に書面主義が明記されている以上、法律に従った申請書の記載事項の欠缺や添付書類の添付がないことを理由に申請が却下された場合には、不服申立てをすることができない。運用によって法律を変えることはできないからである。

書面主義の採用は、生活困窮者の状況に応じた生活保護法の柔軟な運用を妨げる要因にもなりかねないのである。

5 加えて、各自治体の生活保護行政の窓口では、現在においても、保護を抑制しようとする違法・不当な申請権侵害または受給権侵害が繰り返されている。

東日本大震災による被災や被害で避難している方でさえ、被災地・被害地の自治体で保護を受けるよう水際で申請権を侵害するという行政対応は少なからず報告され、義援金や原発事故仮払補償金を受け取ったことをもって保護廃止されるなど、苦しめられた経験がある。

このような憲法で保障された生存権をないがしろにする行政対応は、決して許されないものであるが、法案が可決されると、今以上に抑制姿勢が明確となり、有事において深刻な結果を惹起しかねない問題である。

6 日本は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)を批准している。国連の社会権規約委員会は、このほど、「生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう、締約国(注・日本)に対して求める。」との勧告(日本政府の第3回定期報告書に関する総括所見)を出した。書面主義によって申請手続を現在以上に煩雑なものに改悪することは、基本的人権である社会権の国際的なスタンダードからも許されないことである。

7 このように、法案による書面主義の採用は、憲法25条によって保障された生活保護の申請権・受給権の侵害に拍車をかけるおそれが大きいばかりでなく、いざ大規模災害が発生した際に、人命にさえ影響を及ぼし、国際的にも批判されるような内容であるので、これを成立させることは許されない。

よって、すみやかに、法案は廃案されるべきである。

以上

☆転載終了☆

《三郷生活保護裁判弁護団等による生活保護法改正案に抗議する緊急声明》

三郷生活保護裁判弁護団等による生活保護法改正案に抗議する緊急声明》が2013年5月21日に発表されました。その全文を転載させていただきます。

☆転載開始☆

生活保護法改正案に抗議し、その撤回・廃案を求める緊急声明
 
政府は、本年5月17日、生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を閣議決定した。
改正案は、本来、すべての国民に「権利」として保障されている保護申請権について、行使の自由を奪い、これを不当に抑制するものであり、申請権を形骸化させるものであるから違法、違憲の誹りを免れない。


1 現在の運用上の問題点-申請権の抑制

(1) 水際作戦とその常套手段

生活保護の実施機関は、有効な申請があれば、保護の要件を吟味し、保護を開始するか却下するかを期限内に回答する義務(審査応答義務)を負う。逆に、有効な申請がなければ審査応答義務を負わず、不作為の違法を問われることはない。

ところで、生活保護の窓口においては、これまで、要保護者が申請意思を表明しても、申請があったものとして扱わず、単なる「相談」として処理し、審査応答義務を回避するという違法な「水際作戦」が横行してきている。その常套手段とされてきたのが、申請意思が表明されても①申請書を交付しないという方法であり、また、②現行法では申請時には必要とされていない給与明細、預金通帳、年金手帳等の資料提出を求めて追い返すという方法である。

実際、さいたま地方裁判所が、本年2月20日に、三郷市福祉事務所による申請権の侵害を認定し損害賠償を命じた三郷事件においても、要保護者が繰り返し窓口に足を運び申請意思を表明したにもかかわらず、福祉事務所は約1年半に渡り申請書を交付しなかった。裁判において、証人として出廷した複数のケースワーカーは、申請意思が表明されても、申請書を出すか否かは、その都度、所内で協議して決定する運用である旨証言しており、また、三郷市は、水際作戦の再発防止のため福祉事務所のカウンターに誰でも手に取れる形で申請書を備え置くべきであるとの弁護団の要請を明確に拒否した。このように、申請書は自由に入手できない形で保管され、申請意思が表明されても、やすやすとは申請書を交付しないという形で、申請扱いにせず、審査応答義務を回避するという運用が行われてきているというのが実務の現状であり、要保護者にとっては、申請書を交付してもらうことが、生活保護を利用するための厚い障壁となっている。

また、派遣切り等で仕事と住居を喪失した人やDVから逃れてきた人など、ぎりぎりの状態まで追い詰められた人は、預金通帳や給与明細などを所持していないことが多いにもかかわらず、生活保護の窓口でこれらの書類の提出を要求されて追い返される例が後を絶たないというのが、これまでの反貧困ネットワーク埼玉等の支援活動の中で確認されてきた事実である。これまでは、厚生労働省でさえ、「住宅賃貸借契約書や預金・貯金通帳など、申請者が申請時において提出義務を負わないものの提出を求めることを内容とした書面を面接相談の際に使用し、それらの提出が申請の要件であるかのような誤信を与えかねない運用を行っている事例等、申請権を侵害、ないし侵害していると疑われる不適切な取扱いが未だにに認められている」(平成25年3月11日厚労省社会・援護局関係主管課長会議資料参照)として、同様の認識を示しているところである。

(2) 扶養照会による申請抑制効果

現行法下においても、扶養義務者に対する扶養照会が行われている。

生活保護を利用しようとする者の親族もまた生活に困窮していることが多く、そうでなくても、DV等の様々な事情により疎遠になっていたり関係が悪化していることが多い。このような背景がある中で、扶養義務者への通知がなされることにより、親族間の軋轢があらためて生じることやスティグマ(恥の烙印)を恐れて、申請を断念する場合が少なくなく、扶養照会によって申請が事実上抑制されているという現状がある。

(3) 捕捉率

このような違法な水際作戦の横行や扶養義務者に対する扶養照会等が行われている結果、生活保護の捕捉率(制度の利用要件を充たす者のうち現に利用できている者の割合)は、現行法下においても、わずか2割程度であり、諸外国に比べ著しく低い水準にある。

2 改正案の内容と問題点

(1) 改正案24条1項2項について

改正案は、生活保護の申請は、申請書を提出してしなければならず、また、この申請書には保護の要否判定に必要な書類を添付しなければならないとする(改正案24条1項、2項)。これは、申請書を提出し、かつ、申請書に給与明細等の必要書類を添付しなければ、有効な申請にはならないということを意味する(申請の要式行為化)。

上記のとおり、これまで、申請意思が表明されても①申請書を交付せず、あるいは②給与明細等の資料提出を求めて追い返すという方法を常套手段とする水際作戦が横行してきた。現行法下においては、申請は非要式行為とされ、口頭による保護申請も認められるというのが確立した裁判例であるから、このような水際作戦に対しては、支援者が窓口に同行したり、口頭による申請があったにもかかわらず審査応答義務を果たさなかった違法行為に対しては三郷事件のように訴訟で争うといった方法によって対抗し、違法行為を是正し、抑止することが可能であった。

しかるに、改正案が成立すれば、要否判定の必要書類を添付した申請書を提出しなければ申請とは認められず、口頭のみによる申請は要式を充たさないものとして無効となるから、福祉事務所は、これまで違法とされてきた①申請書を交付せず、②添付資料の提出を求めて追い返すという常套手段を、今後は法律のお墨付きを得て、合法なものとして堂々と駆使できることとなる。その結果、これまで以上に生活保護の申請が抑制され、捕捉率の低下を招くことは、必至である。

(2) 改正案24条8項、28条2項、29条

改正案28条2項は、保護の実施機関が、要保護者の扶養義務者その他の同居の親族等に対して報告を求めることができると規定している。また、改正案24条8項は、保護の実施機関に対し、保護開始の決定をしようとするときは、あらかじめ、扶養義務者に対して、厚生労働省令で定める事項を通知することを義務付けている。さらに、改正案29条は、保護の実施機関に対し、扶養義務者の収入等につき、税務署等に対する広範な調査権限を付与している。

このような改正案が成立すれば、扶養義務者との軋轢やスティグマを恐れる要保護者に一層の萎縮効果を及ぼし、生活に困窮する者の多くが、保護申請を断念する事態になることも明らかである。

3 保護申請権を形骸化させる改正案の撤回・廃案を

憲法25条は、すべての国民が健康で文化的な生活を営む権利を保障し、これを具体化した生活保護法は、すべての国民に対し、生活保護の請求権を無差別平等に保障し(2条)、保護請求権を行使する具体的な方法である保護の申請について、保護申請権をすべての国民に保障している。改正案は、憲法及び生活保護法によって、「権利」として保障された申請権行使の自由を奪い、これを形骸化させ、憲法25条を空文化させるものである。また、生活保護制度の見直しについて諮問されていた社会保障審議会の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」においても、まったく検討されなかった事項を改正案に盛り込んだという点で手続的にも重大な疑義があり、到底容認できない。

政府は、閣議決定後、運用に変更はないとの弁明を始めているが、運用に変更がないなら、そもそも、あえて法律を改正する必要はないはずである。

よって、改正案の内容及び手続過程の不当性に強く抗議の意を表明するとともに、その撤回、廃案を強く求める。

2013年5月21日

三郷生活保護国家賠償請求訴訟原告弁護団
団 長  中 山 福 二

反貧困ネットワーク埼玉
代 表  藤 田 孝 典

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ホームレス総合相談ネットワーク《生活保護法改正案に反対し廃案を求める意見書》

ホームレス総合相談ネットワーク」(代表・森川文人〈弁護士〉)が《生活保護法改正案に反対し廃案を求める意見書》を2013年5月23日に発表しました。

☆転載開始☆

生活保護法改正案に反対し廃案を求める意見書

PDF→ http://goo.gl/wrQxS

2013年5月23日

ホームレス総合相談ネットワーク  代表(弁護士) 森 川 文 人

1 ホームレス総合相談ネットワークとは[A1]   私たちホームレス総合相談ネットワークは、主として東京都内においてホームレス状態にある人々をはじめとする生活困窮者に対する法的支援活動を行っている団体です。

2013年5月16日閣議決定された生活保護法改正案は、憲法25条に照らして重大な問題があることから以下のとおり意見させていただきます。

2 申請手続を要式行為とする改正案の概要
改正法案24条1項は、生活保護の申請にあたり、これまで口頭で申請の意思が示さ  れれば、申請行為としては足りるとされていた実務運用(大阪高裁平成13年10月19日判決(訟月49巻4号1280号〔上告棄却・確定〕)を改め、申請書の提出を申請者に対して義務付けています。そして、当該申請書には、「要保護者の氏名及び住所」等だけでなく「要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む)」のほか「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出してしなければならないとし、同条2項は、申請書には要否判定に必要な「厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」としています。

3 改正案がもたらす事態
しかし、生活保護申請にあたって生活に困窮して福祉事務所を訪れた申請者に対して、複数の申請書の提出に加えて多岐にわたる書類の添付を義務付けることは、申請者の申請意思を抑圧・萎縮させることに直結します。本件改正は、生活保護の申請に不当な障壁を設けることにつながり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する憲法25条に違反すると言わざるを得ません。

とりわけ、ホームレス状態の方々は、憲法上の権利として生活保護が受給できることをそもそも知らず、また、長期間の路上生活により心身共に疲弊しているなど、自ら生活保護を申請することが能力的にも困難な方が少なくありません。文字を読み書きする能力も無い方も大勢います。精神等の疾患を抱えて、書類の意味さえ理解できない方も決して珍しくありません。

ホームレス状態の方々は、全員住所をもたないため、郵送物を受け取ることができません。つまり、彼らが生活保護の申請をしようとした場合には、食事にも事欠くような絶対的貧困の状態にあり、電車賃すらないにもかかわらず、申請に必要な添付書類を集めるために、遠隔地にある複数の作成機関の窓口に、直接本人が行って、書類の交付を求めざるを得ないのです。なお、住所を持たないということは、ホームレス状態にある方々は、有効な身分証明書を持たないことも意味します。このような状態で、仮に本人が窓口までたどり着いたとしても、身分証明をもたない本人に対して、個人情報を多く含む必要書面の交付がなされうるのか、極めて疑わしいものです。

そのような方々に「申請書」の提出と複数の書類の添付を義務付けることは、不可能を強いるに等しい事態です。

上記法改正は、生活保護の申請を不可能にするという現実の効果をもたらすことは必至です。また、現実の生活保護行政をみても、福祉事務所の窓口で生活困窮者を追い返す「水際作戦」と称される違法な申請不受理、申請書不交付の事例が社会問題化しています。

このようなホームレス状態にある方々、その他の生活困窮者の置かれた状況、現実の福祉事務所における対応の実態を踏まえれば、今回の改正案によって申請書の提出、書類の添付を申請者に対して義務付けることにより、生活に困窮した人の生活保護申請を現在より一層困難にすることは明らかです。また、福祉事務所職員による違法な申請不受理、申請書不交付などの「水際作戦」にお墨付きを与えるものとなってしまいかねません。

4 改正案は、憲法25条1項に違反します
そもそも、生活保護制度は、憲法25条1項に基づき、全ての生活困窮者に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。  生活保護申請行為に申請書、複数[A8] 書類の添付を要求する今回の改正案が申請者に一定の義務を課し負担を負わせるものである以上、法改正にあたっては、改正する必要性、合理性があるのか生活保護行政の実態と憲法25条1項で保障される権利の観点から吟味されなければなりません。今回の改正案は、不正受給対策のためと言われていますが、立法目的との関連も明確ではありません。

実際の生活保護制度をめぐる現状を踏まえれば、そもそも改正の必要性は存在せず、むしろ改正によって生活に困窮した人がより一層生活保護を申請しづらくなるという具体的弊害が予想されている以上、改正の合理的理由はまったく認められず、憲法25条1項に違反すると考えます。

5 廃案を求めます
私達は、ホームレス状態にある方々の法的支援を行い、福祉事務所において生活保護申請の支援を行う者として、今回の改正案によって、福祉事務所の現場でおこる苛酷な事態を容易に想像することができ恐怖すら感じています。  今回の改正案は、憲法25条1項が保障する生存権を奪う違憲な法案立法であると言わざるを得ず、法律家として断じて認めるわけにはいきません。改正案が、速やかに廃案とされることを求めます。                                       以上
☆転載終了☆

動画「生活保護制度の今とこれから」河邉(こうべ)優子(弁護士)

YouTube動画を紹介します。「STOP!生活保護基準引き下げ」アクションのなかま河邉(こうべ)優子さん(弁護士)が《生活保護の今とこれから》を語っています(動画冒頭~28分過ぎ迄。後半は質疑応答)。


生活保護制度の今とこれから / こうべ 優子 ( 弁護士 ) [ 2013.04.13 ](再生時間約1時間)

2013年4月13日、東京・水道橋「スペースたんぽぽ」で開催されたイベント《格差・貧困に抗う「怒れる者たち」の連帯を!4.13FORUM 社会の底辺から「生きる希望」と「公平・平等な権利」をつかみ取るために!》。主催:「持たざる者」の国際連帯行動。

仙台弁護士会《生存権保障を後退させる生活保護法改正案の廃案を求める会長声明》

仙台弁護士会が《生存権保障を後退させる生活保護法改正案の廃案を求める会長声明》を2013年05月22日発表しました。

☆転載開始

生存権保障を後退させる生活保護法改正案の廃案を求める会長声明

2013年05月22日

1 政府は、平成25年5月17日に生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を閣議決定した。
しかし、この改正案には、生活保護申請をしにくくするとともに、受け付けられるべき生活保護申請を福祉事務所が受け付けないという違法行為(いわゆる「水際作戦」)が横行して生活保護制度の利用が抑制され、生存権(憲法25条)保障が揺らぐ事態を招きかねないという重大な問題点がある。

2 改正案における生活保護法24条1項は、保護開始の申請について「要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む)」や「その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出して行わなければならないとし、また、同条2項は、前記申請書に、保護の要否等を決定するために必要なものとして「厚生労働省令で定める書類」を添付しなければならないとしている。
このような改正案の内容について、厚生労働省は、これまでの生活保護行政の運用を変更するものではないと説明している。
しかし、現行生活保護法24条は、保護の申請を、書面によって行わなければならない要式行為とはしていない。かえって、生活保護申請の事実の有無が争われた事案において、口頭での申請も有効な申請として認められるということが裁判例上も確立している。
このような改正案が可決・成立すれば、生活困窮者が生活保護申請の意思を、口頭又は任意の書面で福祉事務所に伝えたとしても、法律上の申請要件を充たさないものとして受け付けられなくなるおそれがあるのであって、生活困窮者による申請権の行使を著しく制限するものに他ならない。

3 また、保護の申請書に何らかの書類を添付することも、現行の生活保護法は求めていない。そもそも、ホームレス状態であったりあるいはDV被害などから逃げ出したりして困窮している者ほど、改正案による生活保護法24条2項が想定するような預金通帳や過去の給与明細などの収入や資産等に関する資料を用意することが困難である。
それにもかかわらず、改正案による生活保護法24条2項が、申請書への書類の添付がなければ有効な申請として扱わないことを認めるのであれば、そういった困窮者を生活保護制度から閉め出すことになりかねない。

4 さらに、このような生活保護申請の要式行為化や申請書への資料添付の義務化が実現すれば、それを悪用した形での「水際作戦」が横行するおそれがある。
このような危惧は、福祉事務所の窓口において、「水際作戦」によって生活保護の申請権が侵害されたという事例の報告が、現在でも少なくないことからすれば決して杞憂ではない。
また、例えば、保護開始決定時に扶養義務者への通知を行うことを義務化する改正案24条8項には、親族への通知がなされることを恐れる生活困窮者への萎縮的効果が懸念されるなど、改正案にはその他にも問題となる部分がある。

5 これまでも、生活保護制度の利用から排除されたことにより、生活困窮者が餓死するなどの事態が発生していたが、以上のような改正案の規定は、生活困窮者が生活保護を申請する権利の行使を著しく制限するものであって、そのような事態を数多く発生させるおそれがある。
よって、当会は、生存権(憲法25条)保障という生活保護制度の役割を大きく後退させる改正案の廃案を強く求めるものである。

2013年(平成25年)5月22日

仙 台 弁 護 士 会

会長 内  田  正  之

☆転載終了☆

大阪弁護士会会長声明《要保護者の保護の利用を妨げる「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明》

「水際作戦」を合法化する生活保護法改正案について、大阪弁護士長声明を出しました(※PDFファイル)。

☆転載開始☆

要保護者の保護の利用を妨げる「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明

   政府は、本年5月17日、生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を閣議決定し、国会に提出したが、改正案は、いわゆる「水際作戦」を合法化し、さらには、要保護者をより一層委縮させることにより、保護申請自体を抑制する効果を与えるという看過しがたい問題を孕んでいる。

   すなわち、まず、現行生活保護法(以下「現行法」という。)は、保護の申請について書面によることを要求しておらず、申請意思が客観的に明白であれば口頭による申請も有効であるとするのが確立した裁判例であり、また、申請の際に、要否判定に必要な書類の提出も義務付けてはいない。

   しかし、実際には、全国の福祉事務所の窓口において、要保護者が生活保護の申請意思を表明しても申請書を交付しなかったり、疎明資料の提出を求めて申請書の受理を拒否するという違法な運用(いわゆる「水際作戦」)が少なからず見受けられ、大阪市においても、2007年に、片目失明等の後遺症に苦しむ男性が、生活保護の申請に赴いたにもかかわらず、窓口で診断書等をそろえてくるように言われて申請を拒否され、その後、同居していた認知症の母親と心中を図り母親を殺害するという痛ましい事件に発展したことが報道されている。

   ところが、改正案第24条1項は、生活保護の申請は、「要保護者の資産及び収入の状況」その他「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書の提出をもってしなければならないとして要式行為化し、さらに同条2項は、申請書には「厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」として、要否判定に必要な書類の添付までも必須の要件としている。しかしながら、このような改正がなされると、添付書類の不備等を理由として申請を受け付けない取り扱いが合法的に行われることになり、まさに、これまで違法とされてきた「水際作戦」が合法化されることになる。

   次に、改正案第24条8項は、保護の実施機関に対し、保護開始の決定をしようとするときは、あらかじめ、扶養義務者に対して、厚生労働省令で定める事項を通知することを義務付けており、さらに、改正案第28条2項は、保護の実施機関が、保護の決定等にあたって、要保護者の扶養義務者等に対して報告を求めることができるとしている。また、改正案第29条1項は、過去に生活保護を利用していた者の扶養義務者に関してまで、官公署等に対し必要な書類の閲覧等を求めたり、銀行、信託会社、雇い主等に報告を求めることができるとしている。

   しかし、現行法下においても、保護開始申請を行おうとする要保護者が、扶養義務者への通知によって生じうる親族間のあつれき等を恐れ、申請を断念することも少なくないことから、改正案によって扶養義務者に対する通知が義務化され、調査権限が強化されることになると、要保護者の保護申請に対し一層委縮効果を及ぼすことは必定である。

   こうした改正案に対する批判の高まりを受けて、厚生労働省は、「必要な場合は口頭申請も認める」、「書類の提出は保護決定まででよい」、「扶養義務者への通知は極めて限定的な場合に限る」などとして、従来の取扱いを変更するものではないとの弁明をし始めている。しかし、改正案の文言上、そうした解釈自体困難であるし、仮に、そうした取り扱いを法律の下位規範である省令等をもって定めるとすれば、改正案の内容に正当性がないことを自ら自認することになる。

   当会は、2000年12月の近畿弁護士会連合会人権擁護大会を契機として、他会に先駆け、ホームレス問題などの貧困問題に取り組み、「水際作戦」の根絶に力を尽くしてきた。しかし、改正案は、こうした尽力を根本から否定し、生活保護法の根底にある憲法第25条の精神そのものを踏みにじるものであり、到底容認できない。よって、当会は改正案の廃案を強く求めるものである。

   2013年(平成25年)5月21日大阪弁護士会 会長 福 原 哲 晃

☆転載終了☆

「沖縄タイムス」と「琉球新報」の生活保護関連記事

沖縄タイムス」と「琉球新報」の生活保護関連記事を紹介させていただきます。

※記事の一部 「沖縄タイムス」2013/5/20「論壇 生活保護費下げ 影響大 制度利用しづらくなる恐れ」。安里長縦(あさと ながつぐ/司法書士/那覇市/41歳)《生活保護たたきが止まらない》《生活保護費の引き下げはひとごとではなく、あらゆる制度に影響を及ぼす》《生活保護制度が後退すれば、人々の命と暮らしを支える全ての制度が利用しづらくなるのである》
「沖縄タイムス」2013/5/20「論壇 生活保護費下げ 影響大 制度利用しづらくなる恐れ」。※この記事を執筆された安里長縦さん(あさと ながつぐ/司法書士)は「STOP!生活保護基準引き下げ」 アクションのメンバーです。

※記事の全文 「沖縄タイムス」2013/5/19「社説 生活保護法 申請萎縮が懸念される」2013年5月19日 09時37分  生活保護制度へ厳しい目が向けられる中、政府は不正受給対策を強化した「生活保護法改正案」と、受給手前の生活困窮者に向けた「自立支援法案」を閣議決定した。   自立を後押ししながら、受給者への厳格な対応も打ち出す内容で、成立すれば1950年の制度施行後、初めての本格改正となる。    決定した生活保護法改正案では、不正受給の罰金を現行の「30万円以下」から「100万円以下」に引き上げ、返還金には4割まで加算できるペナルティーをつける。   保護申請時には、本人の資産や収入を書き込んだ書類の提出を求め、申請者を扶養できないという親族に対しては、理由の報告も要求する。   背景にあるのは、人気タレントの母親が保護を受けていたことをきっかけに相次いだ「不正受給」報道や、生活保護バッシングである。   もちろん不正受給へは厳正に対処すべきだ。だからといって申請手続きまでも厳格化するのは、問題が違う。   そもそも住む所もない路上生活者や着の身着のまま逃げてきたDV被害者が、預金通帳や給与明細、年金手帳といった収入が証明できるものを持っているだろうか。   北九州市で生活保護の申請を拒まれた男性が孤独死し問題になった時は、家族の扶養義務を重視しすぎた対応が指摘された。死亡した男性は妻と離婚しており、子どもとの関係も複雑だったからだ。   引き締め策が保護のハードルを高め、必要な申請をためらう事態を招かないか、心配される。   法案のもう一つの柱は、自立のための施策の強化だ。   生活保護法改正案では、就労を促すため、働いて得た収入の一部を積み立て、保護から脱却した後に支給する「就労自立給付金」をつくる。   自立支援法案では、生活保護に至らないよう、仕事と住居を失った人に家賃を補助する制度を恒久化する。   受給者の就労インセンティブを高め、保護を受ける一歩手前の人たちに「安全網」を設けるのは、必要な対策といえる。   ただ自治体で先行する就労支援が、思ったような成果を挙げていないのが気になる。いったん就職しても長続きしないという。   対象となる人たちは、職業訓練を受ける機会に恵まれず、社会的にも孤立してきたケースが多い。仕事に就いた後も寄り添う「伴走型」の支援でなければ、有効に機能しないということだろう。   生活保護を受けている人は1月時点で約215万人。過去最多を更新し続けている。   貧困の広がりとは裏腹に、受給者に対するまなざしは厳しさを増している。   そもそも生活保護は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を権利として具体化したものである。生活保護の見直しで一番重要なのは、誤解や偏見のないよう制度の趣旨を社会全体で共有することではないか。   法改正に求められているのは、不正受給対策と同時に、本当に困っている人がいつでも安心して使えるよう安全網を再構築することだ。
「沖縄タイムス」2013/5/19「社説 生活保護法 申請萎縮が懸念される」

※記事の全文 「琉球新報」2013年5月20日 [月]社説   生活保護改正案 申請手続き厳格化は疑問    不正受給対策を強化する生活保護法改正案と、生活困窮者自立支援法案を政府が閣 議決定した。  不正受給は許されないし、生活困窮の負の連鎖を断ち切る支援策の拡充も必要であ る。しかし今回の改正案は、不正受給対策を名目に手続きを過度に厳しくし、法制度 を骨抜きにすることにならないか、疑問を禁じ得ない。  改正案では罰則を強化し、不正分の返還金にペナルティーとして4割加算できるよ うにしたほか、受給者を扶養できないとした親族に理由の報告を求めることとした。  問題なのは、生活保護の申請時に、受給者本人の資産や収入などを書き込んだ書類 を提出することを明記したことだ。  現行運用では、住居の賃借契約書や預貯金通帳などの必要書類は申請後に求められ れば提出することも可能だが、改正案はこれら書類が申請時にそろっていなければ受 け付けないとの趣旨だ。  しかし、これは厳しすぎる。実際に生活に困窮し、一刻も早く支援を必要としてい る人に対し、書類が用意できないのなら申請するなとでも言うのか。受給者支援団体 などから「申請窓口でシャットアウトする『水際作戦』を合法化するものだ」と反発 が上がるのも無理はない。  政府は「運用はこれまで通り」として、書類不備を理由に窓口で門前払いしないよ うに各自治体に通知するという。しかし運用が変わらないのなら、なぜ法律を改めて 明記する必要があるのか。  不正受給者の割合は受給者全体のごく一部との指摘もある。その対策を重視するあ まり、受給のハードルを上げるのは、現在でも本当に必要としている人に行き届いて いないとされる生活保護制度を、さらに形骸化させかねない。  一方政府は、生活保護に至らないよう仕事と住居を失った人に家賃を補助する制度 を恒久化するなどの方策を打ち出した。こういった自立支援策は着実に推進してもら いたいが、これは何も、生活保護受給の申請手続きを厳格化しなければできないとい うものではあるまい。  生活保護費のうち「生活扶助」の基準額が8月から3年程度かけて段階的に引き下 げられる。申請手続きの厳格化案は「最後の安全網」としての生活保護制度をさらに 危うくする恐れがある。国会での慎重審議を求めたい。「琉球新報」2013/5/20「生活保護改正案 申請手続き厳格化は疑問」

5/17首相官邸前抗議アクションの動画

2013年5月17日に行なわれた首相官邸前抗議アクションの動画です。


2013年05月17日東京・永田町、「生活保護法改正法案」の撤廃を求める緊急声明》(再生時間1時間1分14秒)

フリージャーナリスト石坂元一さんの撮影・編集です。石坂さん、ありがとうございます。

(な)

〈チラシ〉『生活保護法を改正しても申請手続は今までと同じ』という厚労省の虚言

生活保護問題対策全国会議」制作のチラシ《『生活保護法を改正しても申請手続は今までと同じ』という厚労省の虚言》を紹介します。

※チラシ画像はクリックすると大きくなります。

☆転載開始☆

【拡散希望】
「生活保護法を改正しても申請手続は今までと同じ」という厚労省の虚言を論破するチラシです。ぜひ、多くの方に見ていただきたいと思います。

生活保護問題対策全国会議のブログからPDF版がダウンロードできます。

印刷用(PDF)の表示はこちらから

※一部黒塗りで表示されますが、印刷ではきちんと表示されます。

一度「ダウンロード」すると印刷できます。

☆転載終了☆

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